2019年6月19日(水)

せかい旬景 結婚披露宴でともす「幸福の火」(モンゴル)

コラム(国際・アジア)
2019/6/8 5:50
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結婚式のベストシーズンは国によってさまざまでモンゴルでは秋だった。ウランバートルを訪れた昨年10月、チンギスハンの巨大な像がある広場を歩いていると、多くのウエディング服姿のカップルが入れ代わり立ち代わり記念撮影していた。

スフバートル広場に並ぶ新郎新婦(中央)とおそろいの衣装を着る花嫁介添え役「ブライズメイド」と花婿介添え役「アッシャー」

スフバートル広場に並ぶ新郎新婦(中央)とおそろいの衣装を着る花嫁介添え役「ブライズメイド」と花婿介添え役「アッシャー」

結婚式を終えたばかりの新郎新婦が、カメラマンと共に続々と広場に集まってくる。同行する友人たちは、そろいの衣装で欧米スタイルを取り入れた花嫁・花婿のサポート役だ。英語では女性の介添え役を「ブライズメイド」、男性を「アッシャー」と呼ぶ。率先して花嫁のメーク直しや、撮影の場所取りなどに動き回っていた。新郎のニャムバヤル・オットゲレルさん(25)と新婦のサラントヤ・バヤルサイブンさん(23)は「子どもをつくって幸せな家庭を築きたい」と晴れやかに話し、撮影後は友人たちと市内の有名寺院のガンダン寺に向かった。

チンギスハン像の前で記念写真に納まる新郎新婦

チンギスハン像の前で記念写真に納まる新郎新婦

その日の夜、ホテルでの披露宴を見せてもらう機会を得た。地方では遊牧民の移動式住居「ゲル」内で開かれることもあるようだが、会場内では、複数の円卓を親族や友人らで囲んでいた。年配の出席者同士で「嗅ぎたばこ」の交換という伝統的なあいさつをする一幕も。新郎新婦はスーツとドレスでなく、純白の民族衣装「デール」に身を包み、神聖な雰囲気だ。

高砂前に並ぶ(左から)揚げドーナツ、「アイラグ」と呼ばれる馬乳酒、ゆで上げた羊肉

高砂前に並ぶ(左から)揚げドーナツ、「アイラグ」と呼ばれる馬乳酒、ゆで上げた羊肉

高砂前には、「アイラグ」と呼ばれる馬の乳を発酵させた馬乳酒や、ゆで上げた羊肉、揚げドーナツなどが並ぶ。馬乳酒は酸味の強いヨーグルトドリンクのような風味。モンゴルでも年間通して結婚式は行われるが、馬が出産を終えた初夏から9月ごろまでが搾乳可能な時期で馬乳酒がおいしいことも、秋の人気が高い一因だそうだ。10月は暦上縁起もよく、比較的過ごしやすい気候ということも寄与している。

ボウッ――。盆上に火がともされ、火柱は50センチほどの高さに。父親から新郎新婦が盆を受け取る。笑顔ながら緊張気味の面持ちで高砂まで運び、炎を前に高々と両手を上げてお辞儀する。モンゴルではゲル内で炉を囲む習慣があり、火をともす行為は「新生活のスタート」を意味するという。

披露宴会場の円卓で、伝統的なあいさつの「嗅ぎたばこ」交換をする出席者

披露宴会場の円卓で、伝統的なあいさつの「嗅ぎたばこ」交換をする出席者

「長生きしてずっとそばにいてください」――。プロフィルムービーの最後に流れた新婦から両親への言葉に、歓声や拍手がわき上がった。同じ会場での2次会の余興はさらに夜中まで続いた。チンギスハンの加護のもと、新郎新婦と家族に「幸福な火」が末永くともり続けることを祈って会場を静かに後にした。

(写真映像部 三村幸作)

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