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亡き兄にささぐ最後の走り ライダー・中山愛理(下)

2019/6/8 6:30
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モータースポーツが好きな父、慎一郎に勧められ、中山愛理は5歳の時に初めて子供用のバイクに乗った。父は1学年上の兄にバイクを教えていたのだが、穏やかな性格の兄、翔太に物足りなさを感じていた。ならば、兄妹2人で刺激し合えば上達も早いだろう、と考えたのだ。

子供たちが自由に練習する環境を確保しようと、母の晴世はカート専用だった兵庫県姫路市の自宅に近いレンタルカート場に頼み込み、バイクでの走行を許可してもらう。気がつけばバイクに乗るのが日課になった。「毎日、真っ暗になるまで走っていた」と中山。夏休みとなれば、奈良県など遠方のコースにも足を延ばした。

早世した兄の思いを背負い、バイクレースに打ち込んできた(14番が中山)

早世した兄の思いを背負い、バイクレースに打ち込んできた(14番が中山)

レースに勝てば、両親をはじめ、チームの仲間も喜んでくれた。充実感もあった。ただ「好きで始めたわけじゃない」こともあって、どこか真剣になりきれていない自分がいた。「放課後、友達と一緒に遊びに行きたい。でも、バイクをやらなきゃいけないし、勉強もやらなきゃいけない」

転機は高校2年でスポット参戦し、3年からはフル参戦するようになった全日本ロードレース(J-GP3クラス)。「自分よりこんなに速い人たちがいるんだ」。全国のレベルの高さを知り、「もっと速く走りたい、上を目指そう」という気持ちが自然と芽生えてきた。「練習に前向きに取り組めるようになった」

同じ頃、兄の翔太が不慮の交通事故で亡くなるという不幸も重なった。幼少期から競い合ってきた兄の死に「私たちが頑張らなければ」との思いを強くした。大学1年のシーズンには慣れ親しんだ地元を離れ、関東の強豪チームに移籍して武者修行もした。

大学卒業後はバイク開発の道へ

昨季からは兄の名を冠した「TEAM SHOTA」を家族で立ちあげ、弟の耀介(ST600クラス)とともに全日本選手権に参戦。昨年9月に初のポールポジションを獲得し、今季は開幕戦で2位表彰台と結果を残している。

充実したシーズンを過ごす中山だが、レースに挑むのは今季が最後になる。実は兵庫県立大学工学部機械・材料工学科で学ぶ理系女子。大学卒業後はバイクを走らせる側から、内定している二輪メーカーで今度はバイクをつくる側へ。レースの経験を生かしつつ、バイクの開発に携わる。

だから今季は悔いの残らない集大成のシーズンを過ごしたい。「ただ気負いすぎは禁物。勝てるときは勝ちにいかなくても勝てる。自然体で挑みたい」。控えめな言葉に確かな自信がうかがえた。=敬称略

(馬場到)

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