2019年8月17日(土)

中年ひきこもり、親ら苦悩 自治体「ためらわず相談を」

2019/6/3 23:24
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東京都練馬区の自宅で元農林水産事務次官が長男を刺殺したとされる事件や、川崎市多摩区で児童らが殺傷された事件は、ひきこもり状態の中高年を抱える家族が苦悩する姿を浮かび上がらせた。ひきこもりの問題を周囲に打ち明けづらい家族は多く、行政や民間団体による支援にどうつなげるかが課題になっている。

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「川崎市の殺傷事件が頭に浮かんだ。(死亡した長男が)他人に危害を加えてはいけないと思った」。捜査関係者によると、殺人容疑で送検された元農水次官の熊沢英昭容疑者(76)は、長男の英一郎さん(44)について、こうした趣旨の供述をしている。

英一郎さんは5月下旬に実家に引っ越してきたが、定職には就いておらず、自宅で長時間インターネットをするなど「ひきこもりがちだった」(熊沢容疑者)。親が生活費を出していたとみられ、オンラインゲームに没頭していたとの情報もある。父子は口論をするなど関係が悪化していたとみられるが、区役所の福祉部門の担当者らに相談することはなかった。

川崎市の事件で自殺した岩崎隆一容疑者(51)もひきこもり生活を送っていたとみられるが、本人や同居する親族への支援は届かなかった。親族は市に自らの介護サービスについて相談する過程で岩崎容疑者のことにも触れていたが、市は本人に接触しなかった。

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市の担当者は「家族も支援を望んでおらず、本人の意思を尊重して無理に介入しなかったが、何かできることがあったのかもしれない」と悩む。福田紀彦市長は3日の記者会見で「ひきこもりを専門に担当する市職員もいる。心配があればためらわずに相談してほしい」と呼びかけた。

内閣府は3月、中高年のひきこもりの実態を初めて明らかにした。40~64歳で、半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せずに自宅でひきこもる人は全国で推計61万3千人で、若年層(15~39歳)の同54万1千人を上回った。約7割は男性だった。定年退職で社会との接点を失うケースのほか、若い頃からひきこもり状態が続く人も多かった。

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支援体制は整いつつある。厚生労働省が全国の都道府県や政令市に設置する「ひきこもり地域支援センター」など行政の相談窓口では、臨床心理士など専門職が電話などでカウンセリングをする。本人が抱えている課題を第三者が整理し、医療や就労など行政サービスにつなぐ手伝いをする。

各地の家族会やNPO団体では、親や本人が当事者同士で思いや境遇を語り合ったり、専門家を招いて勉強会を開いたりしている。ひきこもり経験者が家族らに助言する取り組みもある。

ただ、都内のある自治体の支援員は「家族や本人からの『SOS』が寄せられて初めて支援が始まる。情報がないと孤立する人を救い上げるきっかけをつかめない」と悩みを明かす。相談をためらう家族や本人に手を差し伸べ、支援につなげるのは難しいという。

家族や当事者は、ひきこもりと犯罪を結びつける風潮が広がりかねないことも危惧する。NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)は川崎の事件を受け、ひきこもり状態にある人について「無関係な他者に危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれだ」との声明を発表した。

上田理香事務局長はひきこもりについて「恥ずかしいことではなく、誰も家族を責めたりしない。地域の家族会や自治体に連絡してつながりを持ってほしい」と呼びかけている。

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