2019年6月19日(水)

ドラッグストア、再編第2幕へ 規模7兆円超えも、成長に減速感
薬剤師の人手不足も後押し、地域すみわけの構図も崩れ

小売り・外食
2019/6/4 0:30
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ドラッグストアのココカラファインを巡り、マツモトキヨシホールディングス(HD)とスギHDが争奪戦に入り、業界再編が第2幕に突入する。市場規模は2018年度に7兆円を突破しコンビニに迫る規模になってきたが、人手不足が顕著になり減速感も漂ってきた。体力を失った中小企業を対象としたM&A(合併・買収)による規模の拡大から、大手が組んで全国の覇権を争う構図に変わりつつある。

ドラッグストアは高齢者やインバウンドを取りこみ成長してきた(マツモトキヨシの店舗)

1日のスギHDとココカラの経営統合の検討開始の発表を受け、ココカラの株価の3日終値は前週末比17%(700円)高の4910円だった。スギHD株は1%安、マツキヨHD株は2%安だった。

日本チェーンドラッグストア協会によると、18年度の全店売上高は前年度比6.2%増の7兆2744億円、店舗数は2万228店となったもようだ。協会が統計を始めた2000年度に比べると売り上げは3倍、店も2倍になった。市場規模で2年前に追い抜いた百貨店(18年の売上高は5兆8870億円)を突き放し、コンビニ(同10兆9646億円)を追う。他の小売業に比べると飛ぶ鳥を落とす勢いにみえる。

長期的視点で見ると成長に陰りがある。03~10年度までの8年間で、1店舗当たりの売上高成長率(年平均)をみると3.6%増だった。利益率の高い医薬品と化粧品で稼ぎ、食品を安価に売って集客する事業モデルで高成長を維持していた。

しかし、11~18年度の1店舗当たりの売上高成長率(年平均)はわずか0.5%増にとどまる。北海道を地盤とするツルハHDや中部を地盤とするスギHDなどが事業展開地域を拡大。地域ごとにすみ分けていた業界の構図は崩れた。

減速懸念が出始めるとドラッグストア各社は再編に乗り出した。ウエルシアHDは15年に京都のシミズ薬品を、ツルハHDが17年に静岡の杏林堂薬局を買収した。16年度には売上高でマツキヨHDが22年ぶりに首位の座を再編巧者と言われたウエルシアHDに譲った。

これまでの再編は大手による中小チェーンの買収が中心だ。企業数はピーク時に比べて4割減の409社まで減少。従来のM&Aを第1幕とするなら、ココカラを巡るスギHDとマツキヨHDの争奪戦は大手企業同士の再編という第2幕の幕開けの位置づけになる。

再編を加速する要因の一つが人手不足だ。店舗の運営を支える薬剤師の18年の有効求人倍率(パートタイムを含む)は5倍を超える。人件費の上昇もあり、ウエルシアHDやココカラといった企業は18年度の連結ベースの売上高営業利益率が17年度に比べて悪化した。業界が成熟しつつあるなか、店舗網を維持するには薬剤師の確保や運営効率化が欠かせない。マツキヨHDとスギHDがココカラに秋波を送るのも大手でさえ中長期では薬剤師などの確保が難しくなるとみているからだ。

米国ではアマゾン・ドット・コムが処方薬のインターネット販売を手掛ける企業を18年に買収し、医薬品販売の分野に本格参入した。法規制が異なる日本でも大衆薬で徐々にネット通販が台頭してきている。異業種との競争が激化しているなかで、ドラッグストア大手でさらなる再編劇が起きる可能性がある。

攻防、今夏ヤマ場

マツモトキヨシホールディングス(HD)は3日、4月26日に発表していたココカラファインとの資本業務提携に向けた協議を、今後も継続すると改めて発表した。先週末にココカラが、スギHDとも経営統合を検討すると発表したことを受けたもの。提携交渉を巡ってスギHDというライバルが登場しても、手を引かないという強い意志を示した格好だ。

3社の交渉の経緯を振り返ると、水面下でつばぜり合いが行われていたことがうかがえる。マツキヨHDがココカラとの提携案件を発表した翌日の4月27日。関係者によると、すでに水面下でココカラと接触していたスギHDは、同日付で経営統合案を策定し、ココカラに送付した。

ココカラの前に2社からの異なる提案が競い合うように並んだ。1カ月後、スギHDの提案も正式に検討する価値があるとみて、6月1日に外部に発表した。ただ現状、どちらの提案が実現性が高いのか評価が難しい。

時価総額は1250億円のココカラに対し、スギHDは3084億円。さらにスギHD株の4割は創業家が握っている。統合が実現した後、創業家色の薄いココカラが実質的にスギHD創業家の強い影響下に置かれるとの懸念が生じる可能性がある。スギHDの統合案は「対等」を強調しており、役員構成でも配慮するとの意向を示しているとみられる。

一方でマツキヨHDの提案は「経営統合」はうたっていない。ココカラにとって独立性を比較的維持しやすい提案とも言えそうだ。ココカラは今後、2社の案を慎重に検討し判断する。スギHDとは7月末まで、マツキヨHDとは9月までの合意を目指し、協議を進める。協議の過程では、別の選択肢なども浮上する可能性はあり、再編の先行きは見通せない。

(池下祐磨、山田航平、林咲希)

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