"ダイヤの原石"守れ スポーツ内科学会が発足

2019/6/3 11:00
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2020年東京五輪・パラリンピックを控えスポーツ熱が高まる中、激しい練習が原因で起こる貧血や無月経、うつ病などに対処するため、若手医師らが「日本スポーツ内科学会」を3月に発足させた。けがに比べ内科系の病気は放置されがちで、特に10代選手に多い。同学会代表の田中祐貴医師は「貧血などが原因で成果が出せず、志半ばで競技を断念する"ダイヤの原石"を救いたい」と話している。

 全国高校駅伝女子でスタートする選手たち。長距離選手は練習のし過ぎにより、貧血が起きることが多いとされる(2018年12月、京都市の西京極陸上競技場)=共同

▽栄養指導

大阪市の高校1年の男子生徒は、中学から陸上長距離を始め、自己記録を次々と更新して強豪高校に進学したが、夏から息切れが目立ち、それまでのように走れなくなった。スランプと思い練習に打ち込んだが記録は伸びず、市内の病院で田中さんの診察を受けた。

血液検査の結果、鉄分の不足で起きるスポーツ貧血と判明した。筋肉の発達に多くの鉄が必要な成長期や、汗とともに鉄が失われた場合になることが多い。田中さんは、自主練習のやり過ぎや睡眠が十分でないことなどが原因とみて男子生徒に栄養指導中心の治療をし、鉄剤なども処方した。

鉄は取り過ぎると内臓などに障害を起こす恐れがあるため、鉄剤注射はしない。この男子生徒は治療開始から3週間で症状が治まり、陸上の記録も改善した。

▽うつ病も

貧血は練習のし過ぎで起きる代表的な症状だが、他にもスポーツ内科で診る症状は多岐にわたる。過剰な練習を長い間続けたために運動機能が低下し、疲労が回復しにくくなる「オーバートレーニング症候群」がその一つ。精神的ストレスから起きるうつ病を伴うことも多い。運動時にぜんそく症状が出るのが、運動誘発性ぜんそくだ。日本では、陸上選手の3~5%が発症しているとの報告がある。

女性選手特有の症状もある。体重を意識して必要なエネルギーを摂取しないと、無月経になることがある。月経がないと、若いうちに骨粗しょう症になってしまうことも。15年の日本産科婦人科学会などの報告では、大学生の女子選手のうち陸上長距離などの持久系競技では21.7%が無月経を、約半数が疲労骨折を経験していた。

▽講習会

スポーツに伴う内科系の病気に対する認識は、日本代表レベルやプロ選手には徐々に浸透してきているものの、中高生世代は指導者も含めあまり広まっていない。危機感を覚えた田中さんは、学会の活動として4月から月2回各地を巡り、講習会を開いている。

さらに東京五輪後をめどに、学会認定資格の創設を目指している。田中さんは「将来的には、全国にスポーツ内科医のネットワークをつくる」と意気込んでいる。〔共同〕

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