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王者ジョシュア初黒星 ヘビー級、混沌の始まり
スポーツライター 杉浦大介

2019/6/3 6:30
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世界ヘビー級史上に残る番狂わせだった。6月1日、米ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで行われた世界ボクシング協会(WBA)、国際ボクシング連盟(IBF)、世界ボクシング機構(WBO)ヘビー級タイトル戦で、王者アンソニー・ジョシュア(英国)がアンディ・ルイス・ジュニア(米国)に7回TKO負けして王座陥落。ロンドン五輪で金メダルを獲得し、プロでも22戦全勝(21KO)の快進撃を続けていたスーパースターが4度のダウンを喫した上での完敗だった。

7回に再びダウンを喫し、レフェリーのカウントを聞くアンソニー・ジョシュア=AP

7回に再びダウンを喫し、レフェリーのカウントを聞くアンソニー・ジョシュア=AP

「これがヘビー級ボクシングだ」

試合後、敗れたジョシュアはそう振り返ったが、両選手がダウンを喫するという大乱戦だった。3回にジョシュアが左フックで先制のダウンを奪った時点では、戦前の予想通りに王者の順当勝ちで終わるかと思われた。

ところがその直後、詰めにかかったジョシュアをルイスの左フックが捉えて逆転のダウン。王者は立ち上がったものの、連打で再び倒され、この時点でストップをかけられても不思議はないほどのダメージを負った。

その後、完全に足にきたジョシュアは必死に回復を目指したものの、6回が終わる頃にはスタミナ切れ。7回にまたもダウンを喫し、最後は自コーナーで戦意を見せずにレフェリーにストップを告げられた。その瞬間、2万人近くの大観衆をのみ込んだ大アリーナは蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。

例えれば、1990年に当時無敵を誇った統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)が東京ドームで初黒星を喫して以来の大波乱……。

番狂わせの勝利を挙げて喜ぶアンディ・ルイス・ジュニアと陣営の人たち=ロイター

番狂わせの勝利を挙げて喜ぶアンディ・ルイス・ジュニアと陣営の人たち=ロイター

メキシコ系としては史上初の世界ヘビー級王者になったルイスは、もともとの挑戦者だったジャレル・ミラー(米国)が薬物検査で陽性反応を示したために約1カ月前に代役起用が決まったという経緯がある。千載一遇のチャンスをつかんだルイスの頑張りはたたえられてしかるべきだが、29歳の挑戦者は2016年12月のタイトル初挑戦で敗れており、もはや有望株と目される選手ではなかった。「ピンチヒッター」に、世界最大級の興行価値を誇った王者が敗れたショックは大きい。

「米英決戦」のドリームプランも霧消

今後への影響も計り知れない。現在のボクシング界において、ジョシュアとWBC王者デオンテイ・ワイルダー(米国)の4団体統一戦こそが最大のビッグファイトと目された。2人合わせて63勝(61KO)無敗、1分け(1日の試合前の時点)という王者同士の激突こそが最大のスーパーファイトだった。「米英決戦」という点もスパイスになり、20年中にも実現すればボクシングの枠を越えた特大イベントになっていたはずだ。そんなドリームプランも、あえなく霧散した。

「この試合は歴史に刻まれる。AJ(ジョシュアの愛称)はより強くなって戻って来るよ。私たちは間違いなく再戦条項を行使する」

ジョシュアを傘下に抱えるプロモーターのエディー・ハーン氏は試合後の記者会見でそう述べ、年内にも再戦を目指すことを公言していた。その一戦が実現したとしても、ジョシュアが以前の強さと華やかさを取り戻せるのかはわからない。この先のヘビー級がどうなっていくのかを予想するのも容易ではない。ただ今後に何が起ころうと、「19年6月1日」は世界ヘビー級戦線の混沌が始まった1日として記憶されていくことになるのだろう。

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7回に再びダウンを喫し、レフェリーのカウントを聞くアンソニー・ジョシュア=APAP

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