滑らかに、最高の走りを 競馬場の芝管理
匠と巧

関西タイムライン
2019/6/3 7:01
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初夏の日差しに緑の芝が映える競馬場のコース。美しい光景だが、時速約60キロというスピードで疾駆する競走馬と騎手にとっては、厳しい戦いの場である。

1~2日かけて芝コースにムラなく殺虫剤をまいていく(阪神競馬場)=目良友樹撮影

1~2日かけて芝コースにムラなく殺虫剤をまいていく(阪神競馬場)=目良友樹撮影

だからこそ「全ての馬が安全に走り、全能力を発揮できるように管理している」。阪神競馬場(兵庫県宝塚市)馬場造園課の青山裕介課長は日本中央競馬会(JRA)の馬場づくりの方針をこう説明する。

重視するのは「平たん性、均一性、クッション性」。平たん性とは馬場に凸凹がないこと、均一性は場所によって芝の状態にばらつきがないことを指す。くぼみや一部だけ馬場の悪いところがあると、脚を取られた馬が故障するリスクが高まる。平たん、均一で、適度にクッションの利いた馬場とすることで安全性を確保する。その実現にはきめ細かな作業が必要だ。

JRAは関西圏では京都競馬場(京都市)と阪神で時期をずらしながら、夏場を除く通年で競馬を実施。開催中は土、日曜のレースへ平日に芝を刈り、必要なら殺菌、殺虫のための薬剤や肥料もまく。

例えば薬剤は、決められた量を広大な馬場に均一に散布しなくてはならない。偏ると一部が病気になり、そこだけ馬場が悪化するおそれがあるためだ。阪神では容量7千リットルの巨大なタンクを持つ大型車を使い、ホースをつなぎ薬剤をまく。作業員には均一に散布する高度な技が求められる。

レース当日も走る馬の蹄(ひづめ)で掘られたくぼみの補修作業などをする。次のレースまでの時間は限られ、馬場の傷み具合を短い時間で判断し、作業の進め方を決める。こうした判断も「熟練していないと難しい」(京都競馬場馬場造園課の鹿内英登課長)。

馬場管理にとって重要なのは開催時だけではない。関西圏での競馬が休みになる夏場は実は最も大事な時期。まとまった休みに傷んだ芝を張り替えるためだ。

京都はおおむね5月下旬に開催が終わると、10月まで競馬がない。芝を根付かせる時間を十分に取れ、生産地から運んだ薄いマット状の芝を直接馬場に張って育てる。一方、6月下旬から9月初めまでと休みが短い阪神は芝の養生の時間が限られる。競馬場内の養成地でしっかり育てた芝を地表から約5センチメートルの厚さでカット。畳ほどの大きさと形状にして張り、短い期間でも定着できるようにする。

クッション性を高める作業も主にこの時期に行う。特殊な機械でコースにいくつも小さい穴を開けて馬場を軟らかくする。地中の通気性が向上し、芝生の生育も良くなる。2010年代に入ると、ナタのような刃を地中深くまで刺し、土壌をほぐす新しい機械も導入。以前より3割ほどクッション性が高まった。

今春は速いタイムのレースが多く、ファンからは「馬の故障を誘発するのでは」との声も上がる。だが、研究によるとタイムと故障の関連性は薄い。安全で走りやすい馬場づくりが進んでいるからこそ、速いタイムが出ているのかもしれない。

(関根慶太郎)

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