2019年9月17日(火)

自治体、「半割れ」の対応に苦慮 南海トラフ対策

2019/5/31 19:06
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政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)が31日に公表した南海トラフ地震の最新の想定死者数は23万1千人で、2013年の試算から3割減少した。一方で、新たな課題として浮上しているのが、東西に広がる震源域の片側で「半割れ」が発生した場合の対応だ。発生場所や規模が読めない中、市町村はどう住民に避難を呼びかけるか苦慮している。

自治体を悩ませているのが震源域の半分でマグニチュード(M)8級の地震が起こる半割れのケースだ。一部地域が甚大な被害に見舞われた状況で、国はまだ地震が起きていない残り半分側の地域の対象住民に1週間の避難を求める。31日の中央防災会議で修正された南海トラフ地震防災対策推進基本計画には、半割れの発生から市町村や住民の対応までの動きが盛り込まれた。

新たな基本計画は市町村に対し、事前に1週間避難の対象地域を指定し、避難場所や経路などを定めておくよう義務付ける。政府は20年春までに自治体がそれぞれ計画を定めるよう促しており、4月から各地で説明会も重ねてきた。

「正直、何から手を着けていいか分からない」。最大26メートルの津波が想定される三重県志摩市の担当者は焦りを隠さない。食料・生活物資の不足などの社会的影響を小さくするため、企業に営業継続を求める可能性もある。「物流を滞らせないために交通規制の方法も検討しないと……」と話す。

地域の「線引き」も壁となる。市町村はどの地域が1週間避難の対象になるかを計画に明示しなければならない。宮崎市の担当者は「対象地域は地価に影響しかねない。不公平感が生じないよう、近隣自治体と綿密に情報交換し、整合性を図る必要がある」と話す。

国が自治体の計画づくりに関するガイドラインを公表した3月末より前から独自に取り組みを始めていた高知県黒潮町の担当者は「自分たちの地域に被害が出ていない段階で、避難の呼びかけに応じてくれるだろうか」と住民への周知に懸念を示す。想定される津波は全国最大の34メートル。全住民の避難先や避難経路の把握などを進めており、「住民への意識付けが大事」と力を込める。

政府は13年に最大32万3千人が死亡し、238万6千棟が全壊するとの被害想定を公表した。31日の中央防災会議で報告された最新の試算結果は、5年間で建物の耐震化が進み、津波への住民の避難意識も高まったことなどを踏まえ、想定死者数を9万人減らした。建物の全壊棟数も209万4千棟とした。減らしてはいるが、目標とするペースには遅れている。

中央防災会議の作業部会は17年に「予知は困難」と報告し、新たな基本計画にも「現在の科学的知見では南海トラフ地震の発生時期、場所、規模を予測できない」と明記された。

福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長(地震工学)は「自治体や学校・福祉施設、鉄道事業者、その他の企業などの間で合意形成ができていないと、いざ住民の避難が始まったときに社会的混乱を招きかねない。地震はいつ起きてもおかしくなく、国はモデル地区を設定して自治体の計画づくりを積極的に後押しするなどの取り組みが求められる」と話す。

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