村田製作所、断トツ収益力の源泉 最強工場を見た
日経ビジネス

2019/6/4 8:55
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電子部品大手の村田製作所の収益力に磨きがかかっている。2019年3月期の売上高営業利益率は16.9%。10%に届かない京セラTDKなどライバルを圧倒する。なぜ、村田製作所は断トツの収益力を誇れるのか。車載用コンデンサーの主力工場を見てみた。

「ここは撮影してもいいですか?」

「いや~、ダメですね」

「では、ここは?」

「ここもちょっと……」

19年4月下旬。村田製作所の製造子会社である出雲村田製作所(島根県出雲市)を訪れて面食らった。製造風景を撮影しようにも、撮影NGの工程ばかりなのだ。

車載向けの積層セラミックコンデンサーを製造する出雲村田製作所

車載向けの積層セラミックコンデンサーを製造する出雲村田製作所

この工場で作られているのは積層セラミックコンデンサーと呼ばれる部品。コンデンサーは電気を一時的に蓄え、電流の安定化やノイズを除去する役割を果たす。高級スマートフォンでは約1000個、EV(電気自動車)では約1万個使われている。村田製作所の連結売上高の36.5%(19年3月期)を占める主力商品だ。

出雲村田製作所では中でも車載向けの積層セラミックコンデンサーの生産を担当している。クルマ業界は現在、「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる変革の真っただ中で、コンデンサーの需要が急拡大している。旺盛な需要に応えるべく、出雲村田では19年11月に新生産棟が竣工予定だ。

積層セラミックコンデンサーの生産工程は多岐にわたる。まず、(1)誘電体と呼ばれる電気を蓄える性質を持つセラミックス原料を合成する。次に(2)溶媒に溶かしたシート状に形成、(3)誘電体シートに内部電極となる金属ペーストを塗布、(4)誘電体シートを数百層積み重ね(積層)、(5)圧力をかけて一体化(プレス)していく。その後、(6)積み重ねたシートをチップサイズ(例えば0.6mm×0.3mm)に分断(カット)、(7)セラミックスとして焼き固める(焼成)。(8)焼成後のチップの両面に外部電極となる金属ペーストを塗布、(9)メッキ加工する。最後に(10)電気的な特性や外観が検査され、完成するという流れだ。

(1)の工程は、村田製作所の八日市事業所(滋賀県東近江市)で手掛けており、出雲村田製作所では(2)以降の工程となる。複数の工程にまたがるが、撮影が許されたのは(10)の検査工程のみ。製造にかかわる工程は一切撮影できなかった。

■「垂直統合」が強さの源泉

実はこうした対応は、主力工場である出雲村田製作所に限った話ではない。記者はこれまでにインダクターを手掛ける登米村田製作所(宮城県登米市)や積層セラミックコンデンサーを手掛ける中国の無錫村田電子有限公司(江蘇省無錫市)を訪れたことがあるが、同様の対応だった。

ここまで情報漏洩対策を徹底するのはなぜか。村田製作所が素材から製造装置までを自前で手掛け、製造工程をブラックボックス化する「垂直統合」型のビジネスを志向しているからだ。

出雲村田製作所の検査工程の様子。自社開発の装置が使われている

出雲村田製作所の検査工程の様子。自社開発の装置が使われている

出雲村田製作所で使われる製造装置のほぼすべてが、自社で開発・製造されている。研究開発拠点である野洲事業所(滋賀県野洲市)にある生産技術部門の技術者たちが開発している。

自社で手掛けているのは装置だけではない。例えば内部電極はスクリーン印刷が使われているが、印刷で使う「版」もグループ会社で作っている。カット工程で使う「刃」も、商品ごとに角度を変えており、社内で研磨処理をしているという。

部品メーカーでは、製造装置メーカーから必要な装置を調達し、生産ラインを構築するのが一般的だ。中には「肝」となる工程については、自社で設計・開発した装置を使う場合もあるが、村田製作所のようにほぼすべての工程で自社開発の装置にこだわるのは珍しい。生産ノウハウをブラックボックス化することで競合との差をつける。それが村田製作所のこだわりだ。

もちろん、製造装置メーカーと共同で生産ノウハウを注ぎ込んだ装置を開発することで、技術的にリードすることは可能だ。それでも、装置メーカーは顧客から得た知見を生かしながら独自に装置を製品化、外販するもの。こうした日本製装置を購入することで急速に力をつけたのが韓国や中国の半導体・ディスプレーメーカーだ。かつて高いシェアを誇っていた日本勢を抜き去ったのは当然のことだった。

検査工程では抜き取り検査も実施されていた

検査工程では抜き取り検査も実施されていた

韓国のサムスングループが積層セラミックコンデンサー事業に参入するなど、「打倒・ムラタ」に向けて動くライバルはいる。ただし、半導体やディスプレーのようなことにはならないはずだ。「積層セラミックコンデンサーは素材と製造装置のマッチングが難しい。他社が我々の装置を使っても同じ商品が作れるわけではない」と村田恒夫会長兼社長は強調する。素材から装置までを自ら手掛ける「垂直統合」への徹底したこだわり。これが村田製作所が積層セラミックコンデンサーで依然として4割の高いシェアを握るカギの1つだ。

(日経ビジネス 佐伯真也)

[日経ビジネス電子版 2019年6月3日の記事を再構成]

日経ビジネス2019年6月3日号の特集「村田製作所 なぜ最強なのか」では、高収益率をたたき出す村田製作所の強さの秘密に多角的に迫った。
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