2019年7月24日(水)

神戸空港 国際化へ一歩 規制緩和で、伊丹は先送り

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2019/6/2 12:00
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関西国際(関空)、大阪国際(伊丹)、神戸の関西3空港の規制緩和をめぐる議論に一定の結論が出た。国際線就航が禁止されている国内空港は伊丹、神戸だけだが、神戸空港は2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)までに国際線就航を検討することになり、6年以内の実現に向け動き出した。一方、伊丹空港は騒音問題解決後に検討と先送りされ、明暗を分けた。

■「ただの検討ではない」

5月11日、議論の舞台となった関西3空港懇談会(3空港懇)で「神戸空港は国際化を含む空港機能のあり方を検討する」ことで合意した。座長を務める松本正義・関西経済連合会会長(住友電気工業会長)は「『検討する』といっても、ただの検討なら合意文章に書く意味はない」と、実現に向けての検討を強調する。

3空港懇後に記者会見する松本座長(5月11日、大阪市内)

3空港懇後に記者会見する松本座長(5月11日、大阪市内)

これまでの3空港懇は国土交通省側が関西に開催を働きかけたが、今回初めて関西から会議開催を求めた。インバウンド(訪日外国人)が関西に大挙押し寄せて経営難の関空は持ち直し、伊丹だけでなく神戸空港も18年から関西エアポートが一体運営するなど、直近の10年の議論から9年が過ぎ、空港をめぐる環境は激変したからだ。

18年9月4日の台風で関空が閉鎖され、国際線は関空だけでいいのかという議論が始まったように思われがちだが、実は松本座長はその前から3空懇開催に動き、まさに同じ日に東京で自民党の二階俊博幹事長と協議中だった。

空港の制約を取り払えば、さらに人を呼び込め、関西経済は活性化する。松本座長は「なぜ海外に行くのにわざわざ成田空港から」という思いもあり、関経連会長就任前から問題意識を持っていたという。

こうした思いから、松本座長は関空と同じ海上空港で騒音問題の少ない神戸空港にまず国際便の就航を目指す。神戸空港で国内線全体の7割を発着させるスカイマークの市江正彦社長は「5月にジェット機2機を調達し、神戸―サイパンなどの国際線を早期に就航できる」と国際線に名乗りを上げるが、松本座長は21年に関西で開催されるワールドマスターズゲームズまでの短期での実現は無理と判断した。

スカイマークは神戸空港の発着便の7割を占め、西の拠点空港に位置づける(神戸空港)

スカイマークは神戸空港の発着便の7割を占め、西の拠点空港に位置づける(神戸空港)

その理由は神戸空港の設備の弱さだ。松本座長は「神戸空港は貧弱で、国際空港というには恥ずかしい」と判断。現在の小規模なターミナルビルの拡張や道路、新交通システムのアクセス強化を国際線就航の条件とした。「神戸の人たちは情熱を示してほしい」とボールを神戸側に投げた。神戸側が今後どういうボールを投げかえすかが、神戸空港の国際化の時期を左右する。

関西3空港を運営する関西エアポートの山谷佳之社長も「国際チャーター便なら今のターミナルでもできるが、それで国際空港と言えるのか。20~30便飛ばないと、国際空港としての運営は難しい」と、小規模な国際化には反対しており、山谷社長の主張が反映された形になった。

CIQ設備は簡易に作れるが……(伊丹空港に臨時に昨秋設置された税関検査用小部屋の間仕切り)

CIQ設備は簡易に作れるが……(伊丹空港に臨時に昨秋設置された税関検査用小部屋の間仕切り)

■伊丹空港が最大の焦点

一方の伊丹空港。今回、神戸空港に隠れて目立たなかったが、「実は最も激論になり、最大の焦点は実は伊丹空港だった」と大阪府幹部は証言する。

兵庫県の井戸敏三知事は早期に国際線就航の検討に着手することを主張したが、騒音問題が残り、伊丹空港の国際化は長期テーマとして先送りされた。「今回の合意はかなり値切られた」と井戸知事はみる。

伊丹空港周辺市で騒音問題が残る兵庫県川西市の越田謙治郎市長は「国際線はチャーター便でもOKとは言えない」と国際化には反対だ。伊丹空港周辺市で国際線に反対なのは川西市ぐらいだが、この壁は今回も越えられず、今後は川西市の同意をどう取り付けるかがポイントだ。

関西空港は利用者の7割がインバウンド主体。国内から海外へ向かう「アウトバウンド」は3割にとどまる。海外へ出張する利用者は伊丹・神戸空港に近い大阪北部から神戸市内に多く、関空からは遠い。

山谷社長は「関空から神戸に便が移るだけでは、関西全体の航空路線が増えるわけではないので意味がない」と主張する。このため、伊丹・神戸空港はアウトバウンド向けの空港として関空とすみ分ける道を模索することになりそうだ。

3空港懇で最大の焦点になったのは伊丹空港の国際線をめぐる議論だった

3空港懇で最大の焦点になったのは伊丹空港の国際線をめぐる議論だった

今回の議論で大きく変わったのは、3空懇開催の主導権が国から地元関西に移り、10年近い間隔があく不定期の開催から、1年に1回は開催する定期開催的な運用に改められたこと。状況の変化に応じた議論がしやすくなる。

関西では21年のワールドマスターズゲームズに続き、25年には国際博覧会(大阪・関西万博)の開催が決まっている。誘致は未定だが、IR(統合型リゾート)も24~25年の開業を目指しており、一気に国際線の需要が増す。

■関空も発着枠に制約

だが、関空にも制約がある。年間23万回の発着回数は19万回に迫る。4万回の余裕があるように見えるが、5月は午前9、10時、午後0、5時台の発着回数が上限の1時間45回に迫る40回以上の日もあり、「発着枠は厳しくなっている」(国交省大阪航空局)。旅行者に便利な時間帯の発着枠は埋まりつつある。

夜中なら空きがあるが、電車、バスの無い時間帯に関空を発着するよりも、朝夕の利用しやすい時間帯に伊丹、神戸空港を発着する方が利用者にとっては便利で、航空需要は大きい。万博開催時期などに国際線が関空では収容しきれず、中部国際空港など関西以外から発着することで関西のビジネスチャンスが減ることもありうる。

一方、国内線については神戸空港の規制が06年の開港以来初めて緩和される。発着回数が1日80回と20回増え、発着時間も午前7~22時から23時まで1時間延びる。神戸空港は関空と同じ海上空港で、伊丹空港のような騒音問題が少なく、規制緩和しやすいが、関空が不振の時期に開港したため、関空のてこ入れ策のために発着回数や時間が抑えられた経緯がある。

運用時間延長のため、国土交通省は20年度にも神戸空港の管制官を増員する方針だ。政府予算案の概算要求に増員費を盛り込む。ただ、空港の運用ルールを定めた「空港の設置及び管理に関する基本方針」は変更せず、全国で国際線が就航できないのは伊丹、神戸空港だけ、という位置づけに変化はない。

神戸空港にも課題はある。日本航空は10年に神戸空港から撤退したが、再就航は検討段階に入っていない。全日本空輸も神戸増便は検討していない。神戸空港を西の拠点空港に位置づけるスカイマークが「当社が増便を全部引き受けてもいい」(佐山展生会長)と唯一、気を吐く状態だ。

■「関空エアの自由にさせぬ」

今後の議論は神戸空港の機能強化と国際線就航をいつ実現するかに移る。松本座長も「微妙な問題もある。関空周辺の人たちの話もよく聞かなければならない」と、関空の地元の意向も気にかける。

大阪南部の自治体は関空の実現に尽力したため、関空に少しでもマイナスになる伊丹・神戸空港の規制緩和に反対の立場だ。3空港を一体運営して民間ノウハウで航空需要の拡大を目指すことになっても「関西エアポートの自由にはさせない」(大阪府南部の市長)と反発する。

これに対し、松本座長は「規制緩和のコンセンサスは得た。状況によってはスピーディーに正しい方向に持って行く必要がある」と、決断時期を探る。

国の状況も変わりつつある。関西新空港の建設をめぐっては神戸沖建設を1973年に神戸市が一度は断ったため、旧運輸省内には反神戸の色彩が強かった。しかし、大物OBが第一線を退いて世代交代が進む。「反神戸の現役幹部はもういない」(国交省幹部)ため、規制緩和には追い風だ。

松本座長は今回の合意について「最初の一歩で、外部環境の変化に対応し、規制緩和は継続していく。25年までの6年間はあっという間だ」と話す。関空の好調持続や政治的妥協を条件としながらも、関西3空港の規制緩和はようやく動き始めた。

(清水英徳)

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