夜風染み入るレクイエム(音楽評)
びわ湖ホールかがり火コンサート

関西タイムライン
2019/5/31 7:00
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、ガラス張りのロビーが琵琶湖に面している。演奏会が始まる前や休憩時間に、空と湖の境を探しつつ船を眺めるのは格別だ。昨年から始まった「近江の春びわ湖クラシック音楽祭」は、フランス発祥の「ラ・フォル・ジュルネ」を引き継いだ催しで、芸術監督の沼尻竜典がプロデュースしている。20分から60分の公演が、大中小の全てのホールを使って次々に繰り広げられる、もうお馴染(なじみ)となったスタイルだ。

ザクセン声楽アンサンブルとびわ湖ホール声楽アンサンブルが舞台に上がった=栗山 主税撮影

ザクセン声楽アンサンブルとびわ湖ホール声楽アンサンブルが舞台に上がった=栗山 主税撮影

屋台が並び、地元の子どもたちも大勢出演する音楽のお祭り、今年は4月27日と28日、10連休の開始に設定された。その2日間の締めくくりとなる「かがり火コンサート」を聞いた。

主役は、びわ湖ホールが育んできた「びわ湖ホール声楽アンサンブル」とドイツから来日した「ザクセン声楽アンサンブル」。それぞれ、2日間の内に単独の演奏もあって、合同演奏である琵琶湖畔での「かがり火コンサート」は、2夜連続の呼び物である。

ただ、初日は強風のために屋内での開催となり、予定通りの「湖畔」開催は最終日のみとなった。19時半。昼間の日差しと喧騒(けんそう)とは全くの別世界。淡いグレーのような暗さを背景に、しんと静まり返る。時折、道路の車の音が聞こえて都会であることを思い出す。期待に見守られ、館長と芸術監督が松明(たいまつ)を持って登場し、「かがり火」を点(つ)ける。

手づくり感が、親近感を生む。これだけでもう大成功だな、と思った。想像以上の寒さと、強い風にかき消される音響には不満が少々残るものの、湖面からの夜風をひたひたと感じながら、ゆらめくかがり火を眺めつつ聴くモーツァルトのレクイエム。春の夜の絶品だった。

(関西学院大学准教授 小石 かつら)

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