2019年8月26日(月)

京都薪能70回 43年ぶり「平安」、新時代祝う舞華やかに
文化の風

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/5/31 7:01
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京都の初夏の風物詩、京都薪能が今年70回の節目を迎える。能楽シテ方の観世流と金剛流、狂言の大蔵流など、京都に拠点を置く能楽師が一堂に会し、普段は能楽堂へ足を運ばない人にも広く親しまれてきた。6月1、2日に開催する第70回は元号が令和に移行して初めてでもあり、「新しき御代を寿(ことほ)ぐ」と題して、祝言色のある曲を集めた。43年ぶりに上演する「平安」などが見どころだ。

70回の記念で上演する観世流能「石橋」=京都能楽会提供

70回の記念で上演する観世流能「石橋」=京都能楽会提供

1日目の初番は、観世流の「平安」。大正天皇の即位式のために創られた「大典」を改作した曲だ。1961年の初演以来、平安神宮で3回上演されたが、76年を最後に上演が途絶えていた。京都薪能を主催する京都能楽会の井上裕久理事長は「今回は70回記念と天皇の代替わりが重なり、いい機会になった」と話す。

■天女4人に増員

勅使が平安神宮に参詣すると、天女が現れて舞を舞い、続いて天つ神が現れて新しい時代を祝福する神舞を舞う。新天皇の即位を祝う「大典」は即位の礼の年のみに上演が限られるのに対し、「平安」は日本の繁栄や世界平和を願う内容で、上演機会も柔軟だ。シテを勤める井上理事長は「新しい曲は時代に合った演じ方が許される」といい、詞章のなかに「令和」の文言を盛り込み、通常は1~2人の天女を4人に増やして華やかさを増すと話す。

もう一つの見どころは、1日目の最後の金剛流「石橋(しゃっきょう)」と、2日目の最後の観世流「石橋」の競演だ。他流の能楽師が同じ公演に出演することは珍しくないが、同じ演目での競演は京都薪能ならでは。文殊の使いである獅子が牡丹(ぼたん)の花と戯れ、獅子舞を舞うという大筋は共通だが、白獅子1人と赤獅子2人が激しく舞い戯れる金剛流に対し、観世流は白獅子1人、赤獅子3人の演出だ。

このほか、1日目には観世流の「草子洗(そうしあらい)小町」、大蔵流狂言の「福部の神(しん)」、2日目は観世流の「絵馬」、金剛流の「羽衣」、大蔵流の「仁王」を上演する。

京都薪能の魅力は、平安神宮の朱塗りの太極殿を背景に、夕暮れのなか、薪のあかりに照らされた能舞台の幻想的な美しさだ。「日本でいちばん美しいとも言われる薪能」(井上理事長)というのもうなずける。能楽堂などでの公演と違って、開放的な雰囲気のなか、くつろいで見られるのも、初心者にはありがたい。

平安神宮が舞台の能「平安」を43年ぶりに上演する(1976年の上演時)=京都能楽会提供

平安神宮が舞台の能「平安」を43年ぶりに上演する(1976年の上演時)=京都能楽会提供

第1回の開催は戦後間もない50年。まだ物資の乏しい時代で、舞台設備も十分に整わなかったが「もう一度世の中に能楽を普及するきっかけにしたいと、流派を超えた能楽師が団結した」(井上理事長)。以来70年間、超流派の能楽師が「手弁当で」続けてきた。2018年には京都市の年中行事にも認定され、地元の風物詩として定着している。だが、近年は客足が伸び悩んでいるのが課題だ。

■客層開拓に課題

最盛期には2日間の開催で1万人超が来場することもあったが、ここ数年は1日あたり1500~1600人程度。特設舞台の場所が変わったことで客席スペースが狭くなったという事情もあるが、「若い人が能に親しむ機会が減り、従来の愛好者は高齢化している」(井上理事長)。

新たな観客を取り込もうと、15年からは5月に京都駅前地下街などで無料の「プレ公演」を開催。16年にロームシアター京都が開場してからは、雨天時の会場として確保するほか、薪能の来場者向けに無料の公開講座を開いている。「100回まで続くよう、今我々がしっかりと土壌をつくらなくては」という願いを込めた公演になりそうだ。

(小国由美子)

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