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首相、データ流通圏を構築へ「WTOでルール整備」

第25回アジアの未来 G20で表明へ

安倍晋三首相は30日、第25回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の晩さん会で演説した。国境を越えた自由なデータ移動を認める「データ流通圏」の構築に向け、信頼性の高いルール整備を提唱した。「WTO(世界貿易機関)の改革と表裏一体だ」と述べ、中国も加わるWTOを舞台にした交渉の枠組みを訴えた。6月下旬に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国として、こうした考えを各国に訴えていく。

首相は演説で「DFFT、すなわちData Free Flow with Trust(信頼ある自由なデータ流通)の体制を築きたい」と訴えた。データ流通は現在、米国や中国、欧州などで独自に発展している。首相は「信頼に足るルールのもとでデータについては自由な流通を許そうという考えだ」と述べ、統一的なルールの整備を提唱した。

構想は個人情報や知的財産などのデータを保護する国際ルールを整備したうえで、医療や産業、交通などのデータの自由な流通を認める。特定の国によるデータの囲い込みや独自ルール作りは認めない体制をめざす。

製造業やサービス業では国境を越えた拠点間でデータをやり取りする企業が増えている。データ利用とプライバシー保護への関心は世界的に高まっている。新興国ではこれからデータ保護法制を整備する国も多く、先進国と同じ高い水準のルールでデータのやり取りができればビジネスが広がる。

首相は「アジアの国々のすべての人にデジタル経済の恩恵が行き渡るようにルールをつくろう」と呼びかけた。こうした取り組みを「大阪トラック」と名付け、G20首脳会議で参加国に呼びかける。中国も加わるWTOを舞台に進めたい考えだ。「WTOに新しい風を吹き入れよう。一石二鳥の提案だ」と訴えた。

1995年に設立されたWTOは近年、紛争処理機能が低下し形骸化が著しい。米中の貿易摩擦のあおりを受け、最近のG20ではWTO改革の明確な方針を打ち出せずにいた。

首相は農産物など利害対立が先鋭化する分野と異なり、手つかずのデータ分野はWTOが主導権を発揮しやすく活性化につながるとみる。G20参加国にはデータ流通圏に前向きな姿勢を示す国が目立つ。データ流通圏とWTO改革の理念がG20で共有されれば、世界のデジタル経済発展の礎となりうる。

演説では地球環境問題を巡り、今年10月に世界の研究者や企業、金融関係者を招き「グリーン・イノベーション・サミット」を日本で開催する方針を示した。大胆な技術革新を企業活動に結びつけ、規制一辺倒でない持続可能な解決をめざす。

生態系への打撃や漁業に悪影響を及ぼす海洋プラスチック問題は世界的な拠点の新設を打ち出した。日本が資金拠出する国際シンクタンク、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に「海洋プラスチックごみナレッジセンター」を年内に創設する。プラごみの効率的な解決に役立つ統計やデータを集め、各国に基盤となるノウハウを提供する。

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アジアの未来

日本経済新聞社は5月25、26日の両日、「世界を変える アジアの可能性」をテーマに日経フォーラム第28回「アジアの未来」を都内で開催します。会場参加に加え、オンラインでの聴講も可能です。

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