進修館 公共施設に見えない異国の雰囲気
ぐるっと首都圏
埼玉県宮代町のコミュニティセンター「進修館」の外観は異国のような雰囲気が感じられ、一見すると公共施設とは思えない。建物は丸い広場を囲むように建つ。結婚式の会場にもなるほか、施設を利用する町民以外にも建物見たさに町外から訪れる人も多い。
進修館は1980年に完成した。「世界のどこにもない空間を」。町は沖縄県名護市庁舎など、独創的な建築で知られる象設計集団に設計を託した。

象設計は「世界の中心の一つ」をコンセプトに、富士山と筑波山を結ぶ軸と南北の軸が交わる点を広場の中心にした。中心から放射線状に広がるように柱を置き、建物の骨格を作った。「世の中にはたくさんの中心がある。進修館も世界の中心。中心から力が発散され、その中心に発散した力のお返しが戻ってくるイメージ」だという。
建物の内外を結ぶ回廊は広場に沿って、カーブを描きながらアーチ状の柱が連なる。柱の根元にはブロックがあり、腰掛けて1人で考え事をし、楽器を練習する姿もみられる。「1人でも立ち寄りやすい空間になっている」(渡辺朋子施設長)。2階のどの部屋にも、すり鉢状の広場から直接入れるのも特徴だ。建物にいくつもの入り口を設けることで、開放的で親しみやすい構造にした。
内装にもこだわりがあふれる。扉の取っ手や机には町の特産、ブドウのモチーフが見え隠れする。利用者らが何気なく使っているテーブルや椅子も、象設計とインテリアデザイナーが設計したオリジナル作品だ。
進修館は来年、40周年を迎える。勉強に励む学生、茶飲み話を楽しむお年寄り、コスプレーヤー――。「すべてを受け入れてくれる空間」(渡辺氏)だからこそ、使う人、過ごし方も幅広い。
数年前には県外に住む夫婦が進修館で結婚式を挙げた。地元事業者らが協力してケーキや料理を用意し、住民もお祝いに駆けつけた。様々な人の出会いと交流が生まれるのも魅力となっている。
(さいたま支局 藤田このり)
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