2019年7月20日(土)

EU人事、独候補に包囲網 仏マクロン氏主導狙う
市場はECB総裁を注視

ヨーロッパ
2019/5/30 18:12
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【ブリュッセル=竹内康雄】今秋そろって任期切れを迎える欧州連合(EU)機関トップの後任選びが本格化してきた。欧州委員長ポストを巡るドイツとフランスのさや当てが激しくなる中、真っ先に動いたのがマクロン仏大統領だ。メルケル独首相が推す独出身候補の就任を阻止しようと包囲網を敷く。EU加盟国の首脳は6月までにEU大統領、欧州中央銀行(ECB)総裁を含めてEU人事を決める予定だが、調整の難航は必至だ。

仏大統領府で会談したマクロン仏大統領(右)とスペインのサンチェス首相(左)(27日、パリ)=AP

23~26日の欧州議会選終了後、マクロン氏の行動は素早かった。27日にはスペインのサンチェス首相を大統領府に招き、28日のEU首脳会議前にはオランダのルッテ首相、ポルトガルのコスタ首相らに加え、東欧4カ国の首脳と会った。

狙いはEUの執行機関である欧州委員会トップの委員長人事で主導権を握ることだ。「カリスマ性と経験がある人物がふさわしい」。委員長に必要な資質を巡るマクロン氏の発言には、メルケル氏が推す独出身の委員長候補のウェーバー欧州議員への対抗心がにじむ。

ウェーバー氏は欧州議会最大会派の「欧州人民党(EPP)」が掲げる委員長候補ながら、EUリーダーを担うカリスマ性や組織トップの経験不足を懸念する声が根強い。マクロン発言はウェーバー委員長の誕生に「ノン」を唱えたもの。コスタ氏も「ウェーバー氏が委員長になることはない」と足並みをそろえる。

欧州委員長とECB総裁は10月、EU大統領は11月に任期切れを迎える。欧州委員長の人選は2014年の前回欧州議会選で最大会派が掲げる候補が就く仕組みが導入された。この制度に従えばEPPが推すウェーバー氏が委員長になる。

しかし、マクロン氏が委員長の資質を満たす候補として挙げたのは米IT大手企業との対決で話題を呼んだベステアー欧州委員(競争政策担当)と英国との離脱交渉を率いたバルニエ首席交渉官、ユンケル欧州委員長を右腕として支えたティメルマンス第1副委員長の3人。ウェーバー氏の名前はなかった。

「有権者への責任がある。我々は自らの候補に寄り添う」。メルケル氏は独出身のウェーバー氏支持を崩さない。しかし28日のEU首脳会議では新委員長は欧州議会の最大会派から自動的に選ぶのではなく、加盟国首脳が主体的に選ぶ方針で一致した。マクロン氏寄りの結果となった。

マクロン氏の強気には理由がある。欧州議会選でこれまで事実上の「大連立」を組んで議会運営を主導してきた二大会派のEPPと欧州社会・進歩連盟(S&D、中道左派)の合計議席数が過半を割り込んだ。過半数確保にはマクロン氏が属すリベラル会派の協力が重要で、同氏がキャスチングボートを握っているのは否定できない。

ただメルケル氏とマクロン氏はともに欧州議会選で国内での政治基盤の弱体化が鮮明になった。対立が深まればEU懐疑派を勢いづかせる懸念がある。足元では独仏対立が鮮明だが、欧州紙では「メルケル氏は別のポストをとるために最後は委員長をあきらめる」との観測も流れる。

欧州委員長だけが単独で決まらないのもEU人事の特徴だ。大国・小国、東西南北のバランスに配慮し、EU大統領や外交安全保障上級代表(EU外相)、欧州議会議長などを一体で決める。「少なくとも女性が2人、要職についてほしい」(トゥスクEU大統領)。女性起用も焦点で、マクロン氏が候補に挙げたベステアー氏が委員長に就けば女性初となる。

委員長と並ぶ最重要ポストがECB総裁だ。ワイトマン独連銀総裁やビルロワドガロー仏中銀総裁らの名前が挙がる。独出身のウェーバー氏が欧州委員長にならなければ、ワイトマン総裁の可能性が出てくる。逆にウェーバー委員長ならばワイトマン氏の目は消える。

ECB総裁は初代がオランダ出身、2代目がフランス、3代目のドラギ氏はイタリア。ECB総裁の獲得は独の悲願でもある。ただワイトマン氏はハト派のドラギ総裁が進めてきた量的緩和やマイナス金利政策に批判的なタカ派の筆頭格で、「金融引き締めが意識され、ユーロ高につながる」(欧州系証券)。市場はワイトマン総裁誕生に伴う政策転換に身構える。

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