訪日客の忘れ物困った ホテルなど、海外返送に苦慮

2019/5/30 11:14
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訪日外国人(インバウンド)客が増えるなか、忘れ物や落とし物が急増している。各国の通貨が入った財布からスマートフォン、食品、お土産品まで内容は様々。全国の宿泊施設の忘れ物だけで年間1千万個以上という試算もある。持ち主を探したり海外に発送したりする作業は煩雑で、回収したホテルなどが扱いに苦慮している。

訪日客の忘れ物が大量に保管されているサクラホテル池袋(5月15日、東京・豊島)

訪日客の忘れ物が大量に保管されているサクラホテル池袋(5月15日、東京・豊島)

訪日客の宿泊者が多い「サクラホテル池袋」(東京・豊島)。別館9階にある配電盤の置かれた1畳分ほどの部屋には時計や財布、衣類などの忘れ物が入った衣装ケースが山積みにされている。「8割以上は訪日外国人のもの」と佐藤麻衣子副支配人。忘れ物は月に80個ほどで、持ち主から依頼があれば海外へ郵送するが、連絡が来ることは少ないという。

連絡があっても、海外では着払いに対応する運送業者は少ない。費用を負担してもらって発送する際も中身や危険物の有無の確認が必要だ。「化粧ポーチなどは中の化粧品の1つでも申告が漏れるとやり直し。日本人の忘れ物と比べてハードルが高く、業務への負担が大きい」と頭を抱える。

2017年に忘れ物などの発送業務を請け負う「忘れ物国際配送サービス」を始めた物流管理会社「オー・エス・エス」(大阪市)は訪日客の忘れ物が全国の宿泊施設で年間1千万個以上と試算する。契約する全国1千超の宿泊施設から毎日数十個の発送を請け負っているといい、担当者は「昨年まで月に数百個だったが今年に入り急激に増え、この春は月に約1千個も発送した」。

忘れ物はレンタカーや鉄道の車内でも目立つ。羽田空港近くの「タイムズカー羽田店」(東京・大田)では忘れ物の半分ほどが訪日客のもの。持ち主から問い合わせがあれば英語を使えるスタッフがメールで連絡するが、特に困るのが国内で借りた携帯型のWi-Fiだという。「出国されてしまうと私たちが代わりに返すしかない」と、店員が貸主の店舗に持っていくことも多い。

京浜急行電鉄が16年に横浜市内に設けた「京急お忘れものセンター」では、パスポートや両替したばかりとみられる日本円が入った封筒などの忘れ物が目立つ。海外からの発送の依頼はまだないが、担当者は「訪日客の忘れ物はここ数年で増えている。(海外からの発送依頼に備えて)郵送代金の支払いや本人確認の方法などを急いで検討したい」と話す。

警察庁によると、17年に警察に届けられた拾得物は約2882万点。訪日客の急増もあり、過去10年で2倍以上になった。都内の交番などに届いた約90万点を保管する東京都文京区の「警視庁遺失物センター」ではスーツケースなどの届け出が増えている。担当者は「統計は取っていないが、遺失物を取りに来る外国人も増えている印象だ」と語る。

保管場所を確保するため、警察は駅や百貨店など警察署以外に遺失物の保管を許可する「特別施設占有者」制度を推進している。警視庁管内では現在、百貨店や鉄道会社など11事業者の20施設を指定済み。警視庁の担当者は「対象施設を増やせるよう各事業者に呼びかけたい」と話している。

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