2019年6月17日(月)

がん、遺伝情報から薬選択 ゲノム医療に保険適用

経済
科学&新技術
2019/5/29 22:20
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がん患者の遺伝情報から最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」が初めて保険適用されることになり、患者一人ひとりの体質や病状にあわせた治療が広がりそうだ。効果が期待できる薬をより早く選べる可能性が高まるが、課題も多い。

中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)が29日、「がん遺伝子パネル検査」を保険適用すると決めた。6月1日から適用される見通し。

がんは遺伝子の変異をきっかけに発症する。遺伝子変異を探し、対応する薬を投与すれば高い効果が期待できる。遺伝子パネル検査では、がん組織などの多数の遺伝子を一度に調べ、専門家が結果を解析。最適な薬の選択につなげる。

がんができた部位ではなく、がんを引き起こした遺伝子の変異に着目するため、肺がん向けの薬が大腸がんの患者に効くといった結果になることも想定される。これまでは一度の検査で少数の遺伝子しか調べられなかったため、検査を繰り返す患者もいた。

検査や解析の結果を患者に説明するまでにかかる医療費は56万円と決まった。保険適用によって患者の負担は原則この3割になるが、1カ月の自己負担の上限を定めた高額療養費制度を利用できれば、負担はさらに抑えられる。

ただ現状では保険診療でパネル検査を受けられる患者は、最適な治療法である「標準治療」がなかったり、効果が出なかったりした場合のみ。がん患者は年間100万人いるが、対象者はこのうち1%程度に限られる。

検査を受けられても、最適な薬の選択につながる症例はまだ1~2割にとどまる。遺伝子変異が見つかっても薬が存在しない場合も多い。治療の精度向上には症例を重ねることが不可欠だ。

遺伝子データを解析して活用する取り組みは欧州で先行する。英国は50万人を対象に遺伝情報などを調査。がんや心臓病、脳卒中など様々な病気の予防や診断、治療法の開発にデータを活用している。フィンランドも50万人規模の遺伝情報を集める計画を進めている。

保険適用を機に、大量の遺伝情報に基づく医療の効率化や高度化を進められるかが焦点になる。

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