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今日も走ろう(鏑木毅)

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中国で得るエネルギー 大会で縁、高い意欲に驚き

2019/5/30 6:30
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2009年に中国で初めての本格的なトレイルランニングレースが北京市郊外で開催され優勝した。私にとって国際大会での初優勝。中国では同大会を皮切りにこの新しいスポーツの扉が開かれ、ここ3年ほどで急成長した。日本には30年の歴史があり、年間400大会が各地で開かれ、競技人口は30万人ほど。そうした日本のレベルに迫る勢いを示している。

トレイルランの世界では「奇跡の急成長」と呼ばれ、そう遠くない将来に競技人口が100万人を超えるのではとみられている。日本と中国では人口が大きく異なるとはいえ驚異的。近年は一般ランナーのみならず、国際舞台で好成績を上げるトップ選手も現れており、他のスポーツがそうだったように競技人口の重心が欧米から中国へと移る時代も近そうだ。

中国との付き合いが始まったのは2009年、北京のレースで優勝したのがきっかけ

中国との付き合いが始まったのは2009年、北京のレースで優勝したのがきっかけ

ここ数年、講演やイベント、ゲストランナーなどに呼ばれ、中国を訪れる機会が増えた。いつも驚かされるのは人々のモチベーションの高さ。トレーニング法や大会運営などを貪欲に尋ね、たとえ通訳がいなくても筆談を交えて少しでも情報を得ようと私を取り囲んで質問攻めだ。日本人にはない独特の熱気に新鮮な気持ちになる。

気になる点もあった。北京郊外のあるイベントでは数人が、提供された飲料を飲みほすとその場にボトルを投げ捨てた。日本のトレイルランの現場では決して見ることのない光景だ。休憩の際に「トレイルランは自然を楽しむスポーツだから、その環境をみんなで良くする気持ちが大切。だからゴミも全て持ち帰りましょう」と説明すると会場は水を打ったように静まり返り、すぐに私に謝罪したり、コースを戻り自分のゴミを拾ったりする選手も現れた。彼らには決して悪意があったわけでなく、マナーを知らなかっただけだとすぐに悟った。

東日本大震災の当日、ちょうど講演のため訪中していた。テレビ画面で映し出される津波の映像にがくぜんとし、翌日の講演は正直、気もそぞろだった。だが私が演壇に立つと、一人の聴衆がすっと立ち上がり「こんな大変な時に話していただいて本当に感謝します。日本は必ず再び立ち上がると信じています」と目にうっすらと涙を浮かべながら発言した。その一言に会場から一斉に拍手が湧き起こり、思いがけず勇気をもらうこととなった。

昨年の訪中ではうれしい出会いがあった。あの震災の時の聴衆の一人が、私に刺激されたといいサラリーマンを辞め、トレイルランニングのレースを開催する会社を興し、地域を盛り上げるために奮闘していた。異国の地でも同朋を得たようで本当にうれしかった。

確かに文化も考え方も大きく異なり、欧米以上に異国だと感じることも多いのが中国。それでも私自身の経験でいえば、みんな情熱的で純粋、生きる力に満ちた魅力あふれる人々ばかりだ。時には激高するところなど、感情表現の部分で戸惑いをおぼえることもある。それでもこの国を訪れるたびに大きなエネルギーをもらっていると感じる。

(プロトレイルランナー)

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