元王者マツキヨ、再編始動 1兆円連合でPB磨く

ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)が同業のココカラファインと資本業務提携の検討を始めた。実現すれば1兆円規模の企業連合が誕生する。3年前に最大手の座から陥落しても業界再編とは距離を置いてきたマツキヨHDが動いたのは、収益源のプライベートブランド(PB)にさらに磨きをかけるためだ。
「資本参加できないか」。マツキヨHDの松本清雄社長がココカラの塚本厚志社長に具体的な打診をしたのは今年に入ってからのことだ。両社は資本業務提携の検討開始を4月26日に発表した。出資額や協業の内容を詰め、9月までの合意を目指している。
PBの販売・開発、医薬品の仕入れの協力を模索し、準備委員会を立ち上げて、どの程度の出資額で相乗効果を発揮できるかを検討する。2018年度の売上高を単純合算すると9765億円、店舗数は3008店のドラッグストア首位連合となる。
マツキヨHDは16年度、M&A(合併・買収)で規模拡大を進めるウエルシアHDに売上高で業界首位の座を譲った。22年ぶりの首位交代となり、18年度は業界5位に沈んだもようだ。この間、マツキヨHDは新規出店を抑制し利益重視に徹した。18年度の営業利益率は6.3%と10年で2.5ポイント上昇し、大手ではトップの利益率を誇る。

原動力は抜本改革したPBだ。ドラッグストア業界の中では早くから手掛けていたが、15年からコンセプトを刷新。メーカー製造のナショナルブランド(NB)の廉価版というイメージを改め、包装デザインや機能を重視した医薬品や日用品の「matsukiyo」、化粧品「アルジェラン」といったブランド力をアピールする販促に打って出た。PBの利益率はNBを約1割上回るという。

商品開発も強化した。処方薬と同等の成分を含む大衆薬の保湿クリーム「ヒルメナイド油性クリーム」など、アジアからの訪日客も含めて延べ6千万人超の顧客データを活用して作り出した商品だ。アルジェランブランドは累計1千万個を販売するなどヒット商品に育ち、PBの売上高構成比率は11%に達した。ウエルシアHD(5.6%)やツルハHD(6.4%)を大きく上回る水準だ。
PBを成長させるには規模がモノをいう。連結売上高が約8兆5千億円のイオンのPB「トップバリュ」や、約6兆8千億円のセブン&アイHDのPB「セブンプレミアム」。いずれも強力な販売規模を背景にして、有力メーカーを巻き込んだPBの開発でさらにブランド力を高めることに成功している。
PBで収益力を高めてきたマツキヨHDは新規出店を18年度まで4年連続で減らしてきた。さらなるPBの成長に新規出店ではなく、規模拡大のために選んだのがココカラとの提携だった。
ココカラは関西地方に強い。関東が地盤のマツキヨHDと商圏の重複が少なく、化粧品など得意とする分野が同じだ。マツキヨHDはPBを既に食品スーパーなど300店に供給するが、ココカラの1354店が加われば販売拡大の効果は大きい。ココカラの塚本社長も「マツキヨのPBはブランド価値が高い」と自店の品ぞろえの充実にマツキヨHDのPBを活用したい考えだ。
日本チェーンドラッグストア協会(横浜市)によるとドラッグストア市場は18年度の全店売上高が前年度比6.2%増の7兆2744億円となり、総店舗数は2万店を突破した。ただ、飽和感も指摘され始めており、NBで同じ品ぞろえをする店舗同士では価格競争に陥りやすく利益も低下する。競争力に直結するPBは各社が注力し始めているが、マツキヨHDは規模拡大でさらに先行したい考えだ。
マツキヨHDとココカラの資本業務提携が実現すれば、大手各社の再編がなかった群雄割拠の業界に新風を巻き起こすことになる。(池下祐磨)
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