なくせ放課後の学び格差 学校外教育にクーポン 千葉市
千葉市は子どもの貧困対策を強化する。今夏から、低所得者層向けに学習塾や習い事の費用を月1万円のバウチャー(利用券)で助成する制度を始める。親の経済力で子供の学習機会に格差が生じないようにすることが狙いだ。事業の原資は個人から市への寄付金で賄う。まずは3年間の実施を予定し、その後の事業継続は利用状況の検証などを踏まえて決める。
8月から教育バウチャー配布
教育バウチャーとは、教育に使用目的を限定した「クーポン」を子どもや保護者に直接支給し、家庭の学費負担を軽減する政策だ。生活困窮世帯に現金を給付しても教育費に使われるとは限らないのに対し、バウチャーであれば、各世帯で確実に教育費として支出される。
千葉市が8月から開始する「学校外教育バウチャー事業」は、市内在住のひとり親かつ生活保護受給世帯の小学5~6年の児童に月額1万円相当のクーポン券を提供する。定員は90人(各学年45人)。7月5日まで受給を希望する世帯を募集し、定員を超えた場合は抽選とする。
学習塾や水泳、ピアノ教室も

対象になる教育サービスには学習塾や家庭教師のほか、水泳やピアノなどの文化・スポーツ活動も加えた。生活困窮世帯の子どもたちの中には、同級生と同じように学ぶ機会が持てないことで自信を無くすケースも少なくない。市こども家庭支援課は「自己肯定感の向上や生活習慣などの改善が期待でき、将来的な自立につながる」と話す。
市によると、同様の取り組みは南房総市に次いで2例目となる。市内には受給対象となる児童が約180人いるとみられ、千葉市は今月から、ひとり親世帯や生活保護世帯向けに事業の通知を始めた。
今回の原資は個人の寄付金
今回の事業は市内の70代の男性が2016年に「ひとり親家庭の支援に使ってほしい」と同市に寄付した4千万円を原資とする。公金を使わずに3年間実施した後は、企業や個人からの寄付やふるさと納税制度の活用などを検討している。
市は4千万円の寄付金がなくなる4年目以降も「家庭の格差を埋めていく事業」(熊谷俊人市長)として継続したい考えだ。年度末には受給世帯の保護者や児童のほか、学習塾などクーポン券の利用先も対象にアンケートを行う。クーポン券配布による学習状況や生活状況の改善効果を確認し、4年目以降の事業継続に向けた課題などを検証する方針だ。
所得格差 教育投資に影響
日本の家計における教育支出のうち、学校外教育の占める割合は大きい。文部科学省の「子供の学習費調査」によると、公立に通う小学生の学校外活動費(年間)は21万7826円、中学生は30万1184円、高校生は17万4871円で、小中学生では学習費の総額の6割を超える。

家計の教育投資は所得水準の影響を受けやすく、所得格差が教育投資格差につながる側面は否定できない。千葉市が8月から始める「学校外教育バウチャー制度」が普及すれば、低所得家庭の子どもも公立学校に通いながら希望する教育を追加的に受けられるようになる。
クーポン券の発行などの実務は、公募で選定した公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」(東京・江東)に委託する。同団体は民間からの寄付を財源として東日本大震災の被災生徒らにクーポン券を配布するなどの実績がある。
千葉市との調整役を担う仙台事務局の吉岡新さんは「一人ひとりの子どもが興味を持ったことに挑戦できる環境を整えるため、スポーツや文化活動なども含めて利用先の選択肢を広げることが重要だ」と話す。