日用品 視点変え別世界 ミニチュア写真家、田中達也さん

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2019/6/8 19:58
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ブロッコリーは葉が生い茂った大きな木、皿洗い用のスポンジは大海原――。普段見慣れているはずの物なのに、小さな人形と組み合わせると別の世界が見えてくる。ミニチュア写真家の田中達也さん(37)はモノを何かに見立て、箱庭サイズの独自の風景を生み出し続ける。作品はテレビドラマのオープニング映像にも採用され、毎日撮影した画像をアップする投稿サイト「インスタグラム」のフォロワーは198万人を超す。

ミニチュア写真家の田中達也さん(鹿児島市内の自宅アトリエ)=沢井慎也撮影  

ミニチュア写真家の田中達也さん(鹿児島市内の自宅アトリエ)=沢井慎也撮影  

作品作りは毎日、鹿児島市内の自宅のアトリエで行う。モチーフは「普通の家にあるもの」が鉄則で、食卓に並ぶ予定の食べ物や台所で使われる清掃用品が主役となる。そこに高さ約2センチの人形を配置していくと小さな世界が徐々に姿を現す。

台所の黄色のスポンジに小さなラクダを乗せると風紋のある砂丘に、水色のアイスクリームの上に宇宙飛行士を「遊泳」させればアイスが地球となる。作品のテーマは世界の様々な風景や日常の1シーンまで幅広い。

タイトルにはフランスパンを列車に見立てて「新パン線」など駄じゃれが並ぶ。見立ての世界をおもしろく、奥行きを持たせて伝えられる。

子供と公園で遊ぶときも、店で食料品を選ぶときも頭の隅でモチーフを探す。物の形からイメージを広げるほか、逆に言葉などから夏→海→青→青いスポンジというように連想してアイデアをすぐメモに記録する。

物を何かに見立てた作品集「ミニチュアカレンダー」の創作は広告会社のデザイナーだった2011年に始めた。たまたま創作したブロッコリーを大樹に見立てた作品などがインスタグラムで話題を呼び、「人を引きつける力」に魅せられた。

フォロワーが増え、1日1作も定着した。「誰かが見てくれると思うとさぼれない。毎日創るのは大変だが、アイデアを生む脳が鍛えられる」。作品数は3千に迫る。

15年に写真家として独立後、ミニチュアアートの仕事も徐々に増え、NHK連続テレビ小説のオープニングを担当するなど仕事の場を広げてきた。

最近は作品の展覧会を国内や台湾で開き、今後は欧米進出も計画する。展覧会はモチーフの大きさが分かり、面白みがより伝わる。「何気なく目にする物が全然違う景色の一部に見えてくる面白さを感じ、その後の日常が少しでも楽しくなってくれればうれしい」

ミニチュア人形

撮影に使用する人形のコレクションは2万体以上

撮影に使用する人形のコレクションは2万体以上

コレクションは人から動物、乗り物まで2万体以上にのぼる。鉄道模型などに使われるタイプで、ドイツのメーカー製が多い。人型の人形でも服装・姿勢、肌や髪の色が微妙に違い、膨大な数から作品の構想に合う物を探すのも重要な作業の一つだ。見つけやすくするために、職業やシーンなど細かに定めた独自の仕分け基準がある。この基準を破って適当に入れたら「絶対に探し出せなくなる」ため、撮影後の片付けにも気が抜けない。

「ミニチュアカレンダー」から

田中さんにこれまでに好評だった作品を挙げてもらった。食材や日用品が別の物に生まれ変わっている。モチーフをよくみると、どれも家で探せば見つけられそうなものばかり。しゃれをきかせたタイトルも見逃せない。(作品の写真はいずれも田中達也さん提供)

「MINIATURE LIFE」

「MINIATURE LIFE」

「食器ングな事故」

「食器ングな事故」

「地球は甘かった」

「地球は甘かった」

「新パン線」

「新パン線」

「しばらくここで待ってクリップ」

「しばらくここで待ってクリップ」

文 酒井愛美

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