王子HD、「脱・紙依存」時間との勝負 新素材に活路

2019/5/27 19:29
保存
共有
印刷
その他

王子ホールディングス(HD)は27日、2021年度までの新中期経営計画を発表した。印刷用紙の市場縮小が続く中、当面はネット通販で好調な段ボール事業で稼ぎ、その間に植物由来の新素材を育てる考えだ。足元の業績は好調だが、世界大手は「脱・紙依存」で先行し収益性も上回る。段ボールもいずれは競争の激化が見込まれる中、目標として掲げる製紙から総合素材メーカーへの転換は時間との勝負だ。

中期経営計画を発表する王子ホールディングスの矢嶋進会長(右)と加来正年社長(27日、東京都中央区)

「新素材は注目されているが残念ながらまだサンプル。早く製品として出荷したい」。27日の中計発表の記者会見で加来正年社長はこう述べた。

特に力を入れているのはパルプの繊維をナノレベルまで解きほぐし、建築や化粧品の成分などに使う新素材の「セルロースナノファイバー(CNF)」だ。軽量なうえ強度が鉄の5倍にも加工でき、30年には1兆円市場に育つとの試算もある。

加来社長は生産能力を早期に現状の10倍の500トンに引き上げる考えも示した。とはいえCNFもまだ売上高はわずかで、10年後に200億円を目指す。「新素材は10年での収益貢献は厳しいが、いつ化けるか分からない。営業部隊を設けて拡販する」段階だ。

一方、同社は市場が縮小する印刷用紙などで、国内3工場の生産能力を減らすと22日に発表。過去最大の削減で、事業の入れ替えを進める。

ただ、海外の製紙大手は従来、主力製品だった印刷用紙に偏らない「脱・紙依存」で先をいく。紙生産量で世界最大の米インターナショナル・ペーパー(IP)は過去10年間で印刷用紙の生産能力を半減させた。

両社とも印刷用紙の売上高の比率は全体の約2割だが、それ以外の売上高では王子HDはレシート用の感熱紙や、ティッシュペーパーなどもまだ多い。一方、業界では採算の良い段ボールなど包装・資材事業は紙と区別しており、IPの売上高に占める比率は07年の2割から7割に伸びた。王子よりも高い水準で、段ボールを含む包装用紙事業だけで王子HD全体の2倍の営業利益を稼ぐ。

王子HDも中計期間はけん引役である段ボールなどの包装資材事業への投資を加速する。東南アジアの生産拠点も拡大し、19~20年はインドネシアなど4工場の稼働を予定する。東南アジアでの売上高は現状の700億円から20年に1千億円に増やし、海外売上高比率を21年度に40%(18年度は32%)に高める。

ただ、中計は27日午後1時半に発表されたが、同日の王子HD株は前営業日の終値に比べて9円安い586円で引けた。4月3日に付けた年初来高値より2割安い水準。「サプライズ感に乏しかった」と国内証券アナリストは指摘する。

12年の純粋持ち株会社制への移行と同時に、従来の王子製紙から現在の王子HDへと社名を変えた。主戦場の東南アジアで段ボールが伸びるうちに紙の会社から紙もつくる総合素材メーカーへ転換できるか。中国最大手のナインドラゴンズも設備増強に力を入れ、アジアでの競争が激化する兆しも出てきており、残された時間は少ない。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]