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人民元下落、けん制強める 銀行監督トップ「投機筋は巨大損失」

【北京=原田逸策】中国の金融当局が通貨人民元の下落をけん制し始めた。25日には銀行監督部門トップが「元を空売りする投機筋は巨大な損失を受ける」と強い表現で警告した。5月上旬は元の緩やかな下落を容認してきたが、節目の1ドル=7元が近づくと一段の下落を認めない姿勢に転じた。資本流出への警戒や米国との貿易戦争がさらにこじれかねないとの危機感がある。

人民元下落を強くけん制した中国銀行当局トップの郭樹清氏

銀行保険監督管理委員会主席で中国人民銀行(中央銀行)副総裁も務める郭樹清氏の講演の原稿を、同委報道官が代読した。郭氏は「人民元が下落し続けることはありえない」と強調した。

沈黙を保って「緩やかな元安容認」とみられていた人民銀が「口先介入」を始めたのは、17日に人民元が1ドル=6.914元で上海市場での取引を終えてからだ。終値の6.9元台は昨年12月以来だ。4月末と比べると2.6%も元安・ドル高が進んでいた。

人民銀の潘功勝副総裁が19日、官製メディアの取材に「中国には人民元を合理的な水準で安定させる自信も能力もある」と強調した。人民銀の盛松成参事も20日に「元が1ドル=7元を突破するのは中国にとって利益より弊害が大きい」とする文章を発表した。

人民銀が為替取引の目安として公表する「基準値」にも異変が起きた。

0.0129、0.0002、0.0002、0.0002、0.0001。20~24日は前営業日と比べた基準値の値幅が急速に縮み、ほとんど動かなくなったのだ。

基準値は大手銀行が人民銀に提示した相場実勢をもとに算出するのが建前だが、実際には人民銀が操作する「ブラックボックス」の部分があり、人民銀が市場参加者に自らの意図を伝える役割を果たしている。

先週の元相場は中国本土で1ドル=6.91元、海外では6.94元を付けていたが、人民銀は基準値をかたくなに6.89元台で設定し続けた。「実勢より元高に基準値を設定するのは、人民銀が『元安を望んでいない』とのシグナルを送る常とう手段だ」(大手銀行)

当局がなぜ態度を変えたか、盛氏の解説は興味深い。心理的な節目である1ドル=7元を突破すると「市場が動揺し、資本流出が加速する」という。習近平(シー・ジンピン)指導部には2015年の人民元の切り下げで金融市場が動揺した記憶がいまだに鮮明だ。

さらに将来の米中貿易協議で「相手に弱みを握られる」という。人民銀の易綱総裁は3月の記者会見で「為替を巡り、米中は多くの重要な問題で認識が一致した」と語り、「為替相場を輸出押し上げに決して使わない」と強調した。既に米国は一段の元安には相殺関税をかける構えをみせる。将来の協議をにらめば、いま米国を刺激するのは得策ではない。

習氏も4月の一帯一路首脳会議で「中国は近隣を窮乏化させる通貨の切り下げはしない」と30カ国以上の首脳の前で約束した。元を安値誘導すれば習氏の顔に泥を塗ることにもなりかねない。

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