最高賞のポン・ジュノ監督、韓国の社会問題を普遍化
カンヌ映画祭リポート(10)

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2019/5/27 17:00
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ポン・ジュノ監督が韓国に初めて最高賞パルムドールをもたらし、カンヌ国際映画祭は閉幕した。韓国が抱える社会問題を、家族というフィルターを通して普遍的な物語へと昇華させた手腕が審査員の満場一致で評価された。

最高賞を受賞したポン・ジュノ監督(左)と「パラサイト」で父親役を演じたソン・ガンホ=ロイター

最高賞を受賞したポン・ジュノ監督(左)と「パラサイト」で父親役を演じたソン・ガンホ=ロイター

「予想のつかないミステリーで、エンターテインメント性と社会性をユーモラスな手法で融合させた。とてもグローバルなテーマであり、映画らしい映画として際立っていた」。コンペティション部門の審査員長を務めたメキシコ出身の映画監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは授賞式後の会見で絶賛した。

「パラサイト」は、全員が失業中という貧しい一家の長男が家族の期待を背負い、IT企業を経営する裕福な家に家庭教師の面接を受けに行くところから始まる。両極端な2つの家族の出会いが、予想だにしない悲喜劇へと加速していく。

不平等や階級闘争が主要テーマ。家族4人それぞれの物語を軸に、コメディー、ホラー、ドラマとあらゆる表現手段を駆使する。世界中で広がる貧富の相克を明らかにすると共に、映画が総合芸術である答えを示すかのように俳優、美術、音楽などあらゆる要素が完璧に連動した。監督は授賞式で「この映画は冒険だった。それを可能にしたのはスタッフや俳優。彼らがいなければ一コマも撮れなかった」と感謝を述べた。

昨年のコンペでは「インビジブルピープル(見えない人々)」を映画作家がどう描くかが大きなテーマとして浮かび上がった。今年は「パラサイト」同様、ローカルな問題をグローバルな問題として捉え直す作品が主要賞に選ばれた。

審査員賞を受賞したフランスのラジ・リ監督「レ・ミゼラブル」は、パリ郊外の貧しい集合住宅で日常的に警察の暴力におびえる黒人の姿を白人警官の視点から描く。監督は「20年間変わらない」という状況を、ドキュメンタリーのような真に迫る映像で告発した。監督は会見で「本当の悲劇に見舞われているのは子供たちだ」とも語り、関心を持つよう訴えた。

欧州各国で懸念されている宗教を通じた若者の過激化をテーマに据えたのは監督賞を受賞したベルギーのダルデンヌ兄弟「ヤング・アフメド」。過激思想に染まった少年が凶行に走る物語で、困難な時代を生きる子供に大人は何をしてあげられるのかを問う。保護者による子供への痛ましい事件が後を絶たない日本にとっても決してひとごととして無視できないメッセージが発せられていた。

映画という「言語」の豊かさに触れたのは特別表彰されたエリア・スレイマン監督「天国に違いない」だった。パレスチナ系の監督自身がパリやニューヨークを訪問する姿を映す。どこに行ってもパレスチナ人として見られることから逃れられない自分自身を客観的にみせるユニークな作品。監督の表情はほとんど変わらず、セリフも一言だけ。観客のイメージに委ねるその語りは、実際にしゃべるよりも時に雄弁で、言葉が分からずとも理解できる希少な作品だった。

ペドロ・アルモドバル、テレンス・マリックらそうそうたる監督が並んだが、ふたを開けてみれば、ラジ・リら初めてコンペ入りした8人のうち4人が受賞するという新参者の抜てきが目立つ結果になった。

日本人監督の公式部門での選出はなかったが、カンヌ初参加となる富田克也監督の中編「典座―TENZO―」が批評家週間で上映された。仏リベラシオン紙が「『サウダーヂ』の日本人監督は、新作を引っさげてカンヌにやってきた」と報じるなど注目の高さをうかがえた。世界が「富田」の名前を知る第一歩となった。=おわり

(近藤佳宜)

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