2019年6月16日(日)

「認知症の影響は限定的」青酸連続殺人、二審も死刑
大阪高裁、4事件の実行認める

社会
2019/5/24 23:55
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青酸化合物を使用した連続殺人事件で、殺人罪などに問われた筧千佐子被告(72)に再び極刑が言い渡された。大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は24日、死刑とした一審・京都地裁の裁判員裁判判決を支持し、重度の認知症で責任能力や訴訟能力はないなどとした弁護側の主張を退けた。上告した弁護側は「現時点での被告の訴訟能力を審理しないままの死刑維持は疑問だ」などと批判した。

認知症の程度が最大の争点だった。弁護側は3月の控訴審初公判で「死因は病死などの可能性がある」として改めて無罪を訴え、認知症の進行を理由に公判の停止か新たな精神鑑定を求めた。しかし、高裁は認めず即日結審。この日も判決の言い渡し前、弁護側は被告人質問の実施などを求めたが却下された。初公判に出席しなかった被告は法廷で判決を聞いた。

判決理由で樋口裁判長は、2017年11月の一審判決と同様に起訴された4事件すべてを被告が実行したと認定。最後の事件があった13年12月時点では認知症を患っていなかったとした医師の鑑定結果に誤りはないなどとし、「結果に関する十分な状況認識や状況判断がなければ実行できない性質の犯行だ」として完全責任能力を認めた。

認知症によって訴訟能力を欠いていたとする弁護側の主張も退けた。樋口裁判長は被告は短期記憶障害だったと推測できるとする一方、一審の公判でどの事件をいつ審理したかや自身の言動についての記憶を比較的良く保持していると指摘。「認知症の影響は限定的で、自己の権利を防御するための訴訟能力を保持している」と認定し、現在も「精神状態に大きな変化はない」と判断した。

判決によると、筧被告は07~13年にかけて、遺産の取得や借金の返済を免れる目的で京都、大阪、兵庫の夫や内縁関係の男性計3人に青酸化合物を飲ませて殺害し、神戸市の知人男性1人を殺害しようとした。

審理なしで訴訟能力認定、弁護側「判断経緯に疑問

判決後に記者会見した筧千佐子被告の弁護人は、実質的審理をせずに死刑とした大阪高裁判決について「再鑑定や被告人質問もなしに、なぜ訴訟能力があると認定したのか。判断の経緯に疑問がある」と指摘。認知症の程度が争われる裁判の場合、「精神科医だけでなく、認知症に詳しい専門家の意見や供述を心理学的な立場から分析した鑑定を取り入れるべきだ」と訴えた。

法務省の統計によると、2017年の刑法犯検挙者数のうち65歳以上の割合は21.5%で、1998年(4.2%)から大きく伸びた。公判の打ち切りは検察側による公訴の取り消しが必要とされてきたが、最高裁は16年「被告に訴訟能力を回復する見込みがない場合、裁判所の判断で打ち切れる」と初判断。その後、打ち切りを命じる判決も言い渡されている。

慶応大の村松太郎准教授(司法精神医学)は「認知症のため訴訟能力が無いとされるのは重度の場合に限られ、どの程度で能力の有無を判断するかなどの議論は積み重ねられているとは言えない」と指摘。その上で「医学的に難しい分野にもかかわらず、説明を簡略化して裁判員への分かりやすさを重視するのは危険も伴う。制度面での見直しも必要だろう」としている。

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