「薩摩ウイスキー」を世界へ 焼酎で海外の壁を痛感
小正芳嗣・小正醸造社長(1)

2019/5/27 6:00
保存
共有
印刷
その他
 世界で注目されるジャパニーズウイスキー。焼酎の本場、鹿児島から2017年に参入したのが老舗焼酎メーカーの小正醸造(鹿児島市)だ。社長の小正芳嗣さん(41)は焼酎を海外に売り込もうとして苦戦。「世界の共通言語」に例えるウイスキーを通じ、蒸留酒メーカーとして存在感を高めることが、海外市場開拓の近道と考えた。

私の心に火を付けたものの一つが、米中西部デンバーでの出来事です。10年ごろ、焼酎を扱ってもらおうと現地の日本料理店を訪れたところ、米国人オーナーから「ほかの蒸留酒に比べて度数が低い。これでは提供しようがない」と断られました。

小正醸造の小正芳嗣社長

小正醸造の小正芳嗣社長

世界では一般的に、蒸留酒はワインやビール、日本酒のような醸造酒と異なり、食事と合わせて飲むものではありません。アルコール度数も高めで、ウイスキーの場合は40度です。

それに対し、日本での焼酎の飲まれ方は限りなく醸造酒に近いです。25度程度のアルコール度数を水やお湯で割ってさらに下げ、日本酒のように原料の味わいを大事にしながら飲みます。その枠が世界で当てはまらなかったのです。

「蒸留所としての小正を認めさせ、ワールドワイドで戦うにはウイスキーが必要だ」。そんな思いを胸に、ウイスキー市場への参入を決意しました。

 焼酎メーカーが造るウイスキーではなく、日本の蒸留酒メーカーとしてウイスキーがあり、ジンがあり、焼酎もあるという未来図を描く。

ウイスキーの製造免許取得に奔走する傍ら、16年5月にウイスキーの本場であるスコットランドに赴きました。同じ蒸留酒ですが焼酎とウイスキーでは造り方に共通する部分と異なる部分があり、特にアルコール分を取り出す蒸留の工程は大きく異なります。現地で様々な蒸留所を巡り、研修も受けました。

帰国後、すぐに蒸留所の設計に取りかかり、17年3月に日置市に所有していた土地で建設を始めました。そこは祖父の嘉之助が樽(たる)で熟成した米焼酎「メローコヅル」を国内外に広めようと確保していた場所です。ウイスキーに形は変わりますが、祖父の夢を実現しようという思いを込めて「嘉之助蒸溜所」と命名し、同年11月から生産を始めました。

鹿児島の焼酎メーカーでは本坊酒造(鹿児島市)が長らくウイスキーを生産しており、免許を申請する前に本坊和人社長にご挨拶に伺いました。「大変だが、面白い世界。お互い刺激し合いながらやっていこう」と励ましていただきました。

ウイスキーに参入して、世界との距離が一気に縮まったと感じています。引き合いの強さもありますし、何よりも蒸留酒メーカーとして戦いのフィールドに立てました。「世界の共通言語」であるウイスキーで得られる経験を生かし、焼酎に代表される国産蒸留酒の面白さを世界に伝えたいと思っています。

(鹿児島支局長 久保田泰司)

(この項続く)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]