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西村由紀江、40枚目アルバム ピアノ愛するスイッチに

文化の風

ピアニストの西村由紀江が4月、40枚目のアルバム「PIANO SWITCH~BEST SELECTION~」を出した。6月から全国ツアーを開く。大阪府豊中市の出身で、作曲家としても活動。これまでの足跡を振り返ってもらい、節目の新作に込めた思いを聞いた。

にしむら・ゆきえ 1967年生まれ。3歳からピアノ、小学校入学前から作曲を始める。小学生のときに東南アジアやヨーロッパなどへの演奏旅行を経験した。86年、桐朋学園大ピアノ科入学と同時にピアニストとしてデビュー。ドラマや映画の音楽も多数作曲している。

アルバム制作のきっかけは昨年、同じ大阪出身のシンガーソングライター、大塚愛にかけられた言葉だった。「子供のころピアノの練習がつらかった時に、西村さんの曲を弾き『ピアノ好きスイッチ』が入りました」――。節目のアルバムのコンセプトは「ピアノに少し興味がある人がもっと好きになったり、ピアノを弾く人がもっと楽しくなったりする『スイッチ』にしよう」と思い至った。

被災地にピアノ

しかし、自身は何度もピアノを辞めようと思ったことがあるという。ピアノの先生だった母の影響で3歳から始めた。しかし「手が小さくて、友達が弾ける曲がなかなか弾けなかった。練習の進み具合も遅いので、ピアニストになるのは無理だと思っていた」。

それでも続けられたのは、ピアノが最も身近な「話し相手」だったからだ。「子供時代は人とコミュニケーションをとるのが苦手で、友達もなかなかできなかった」。代わりに、一日の出来事や気持ちの動きをピアノに語り掛けるように弾いていた。それを五線譜に書き取ることが、作曲につながっていったという。

1986年、桐朋学園大学入学と同時にデビューしたが、「当時は長く続けられると思っていなかった」と明かす。バブル景気がはじまり、音楽はディスコサウンド全盛の時代。ピアニストの道もクラシックとジャズにほぼ限られていた。自作曲をピアノだけで表現することは、なかなか受け入れられなかった。だが91年、大ヒットドラマ「101回目のプロポーズ」の劇中曲を手掛けたことが転機となった。「ピアノはハードルが高いと思っていた人が弾いてくれるようになったり、コンサートに来てくれたりするようになった」

新アルバムは「全てにピアノへの愛と、これまでの感謝の気持ちを込めた」と強調する。愛と感謝を再認識するきっかけとなったのが、東日本大震災直後から続ける「スマイルピアノ500」という活動だ。

使われなくなったピアノを全国から集め、被災地に届ける。搬入に立ち会い弾いてみせると、子供は自らの家族のようにピアノを迎え入れ、親は音色を聴き涙を流してくれるという。「私にとってピアノは、あって当たり前の身近な存在だった。こんなに人の心に響く、素晴らしいものなのだと改めて感じた」という。

子供向け練習曲

15曲を新アルバムに収めた。10曲はこれまで発売した39枚のアルバムから「101回目のプロポーズ」主演の浅野温子をイメージした「夢を追いかけて」や、デビューアルバムから「Objet」などを収録。「弾いていて楽しくなる曲」という観点から選び、再アレンジした。

新曲は5曲。「My Classic」は、転調やリズムの変化などクラシックの手法を取り入れた。「デビュー当時、クラシックのピアニストと思われて、お客さんに距離を感じられるのが不本意だった。だからポップで聴きやすい曲作りを心がけてきた」。しかし「ピアノそのものに焦点を当てると、ジャンルは関係ない」と気付いた。この曲を弾くことで「自分のルーツはクラシックにある」と実感したという。

次世代の育成も見据える。「黒鍵」という新曲は、ショパンの「黒鍵のエチュード(練習曲)」に倣った。ショパンは右手が黒鍵だけだが、この曲は両手とも黒鍵だけで弾けるように作った。手のひらでたたくように弾ける部分など、ピアノを始めたばかりの小さな子供でも楽しめる工夫も凝らした。アルバムと同時に15曲を収めた楽譜集も出版。難易度別に分け、演奏アドバイスを付けた。

全国ツアーは9都市で開く。関西は7月12日、大阪市北区のザ・フェニックスホール。「音色がきれいに伝わる弾き方など、ピアノの魅力を目で見て実感してもらうライブにしたい」と意気込む。

(西原幹喜)

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