2019年6月16日(日)

クアルコム、知財戦略に暗雲 米連邦地裁「競争を阻害」

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2019/5/23 16:02
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【シリコンバレー=佐藤浩実】スマートフォン(スマホ)向け半導体大手、米クアルコムのビジネスモデルが揺らいでいる。独占禁止法違反をめぐる米連邦取引委員会(FTC)との裁判で、米カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁がクアルコムの商慣習について「競争を阻害している」との判決を下した。米アップルとの知財訴訟では和解という「勝利」を手にしたクアルコムだが、当局の壁が立ちはだかる。

CES2019で5Gをアピールするクアルコムのブース(米ラスベガス)

「クアルコムのライセンスの手法は長年にわたりモデムチップ(通信半導体)市場の競争を阻み、その過程でライバルや端末企業、そして消費者を害した」。サンノゼ地裁のルーシー・コー判事は22日までにこう結論づけ、2017年に独禁法違反の疑いでクアルコムを提訴したFTCを支持した。

コー氏が問題視したのは、クアルコムの商慣習だ。世界シェア5割にのぼるモデムチップの供給停止をちらつかせ、同社が持つ広範囲なライセンスの抱き合わせ販売を求めることで、不当に高い収入を得てきたとみる。高速通信規格「5G」対応スマホ向けの通信半導体ではクアルコムの競争力が圧倒的に強いため、この傾向が強まることを警戒。電力消費を抑える特許など様々なライセンスの購入の有無がモデムチップの供給に影響しないよう、顧客のスマホ企業などと取引条件を再交渉するように命じた。

クアルコムのダン・ローゼンバーグ副社長は即座に「(判決には)同意できない」との声明を発表した。命令の取り消しを求め、控訴する方針を示した。今回の連邦地裁判決は、2年あまり続いたアップルとの訴訟を4月に和解にこぎ着けたことで楽観ムードが漂っていた同社に暗い影を落とす。

というのも、知財戦略はクアルコムの根幹だからだ。米インテルや米エヌビディアなど多くの半導体メーカーが「データセンター」「ゲーム」といった用途別に売上高や利益を開示するなか、クアルコムは決算資料に「半導体の販売」と「知財ライセンス」という2つの事業名だけを並べる。 19年1~3月期は半導体の販売で得た売上高が37億2200万ドル(約4100億円)に対し、税引き前利益は5億4200万ドルだった。利益率は約15%と一般的な水準だ。かたや知財ライセンス部門は売上高11億2200万ドルに対し6億7400万ドルの利益を稼ぎ、利益率は60%にのぼる。

カナダの投資銀行カナコード・ジェニュイティのマイケル・ウォークリーアナリストは今回のサンノゼ連邦地裁の判決がクアルコムの高収益モデルを支えてきた「ライセンス事業の長期的な収益に不確実性をもたらす」と指摘する。取引条件の見直しに動けば、韓国サムスン電子から小米(シャオミ)やOPPO(オッポ)といった中国勢までを顧客に抱えるクアルコムの業績への影響は計り知れない。

4月中旬のアップルとの和解の前後で約5割上がっていたクアルコムの株価は、地裁判決が明らかになった22日だけで11%近く下落した。米トランプ政権が中国・華為技術(ファーウェイ)への事実上の禁輸措置を決めた時以上に株式市場は反応した。

米メディアによれば、今回の判決はアップルとの和解内容には影響を及ぼさない見込みだ。ただ今後、アップルなどが別の契約を結ぶ際には、今回のサンノゼ地裁の判決は朗報となる。クアルコムに高額なライセンス料を支払う必要が薄れるかもしれない。消費者もより安価にスマホを購入できるようになる可能性がある。

一方で、通信分野でのクアルコムの研究開発力は群を抜く。売上高に占める研究開発費の比率は約25%に達する。これを支えてきたのは知財ライセンス部門の稼ぐ力だ。携帯通信の技術をリードしてきた同社の開発力が鈍り、技術革新が滞る恐れもある。

カナコードのウォークリー氏は「5G技術の開発における米国の利益を考えると、政府がこの判決に介入しても驚かない」とも指摘した。アップルとの裁判と異なり、最高裁まで係争がもつれ込む可能性もある。クアルコムが訴訟から解放される日は遠そうだ。

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