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憂うべき「日本化」とは(十字路)

「ジャパニフィケーション(日本化)」。海外投資家が欧米経済の先行き懸念を議論する際のキーワードだ。論者により定義はやや異なるが、長期にわたる低インフレ、低金利、金融政策の行き詰まりなどを総称しているようだ。海外識者は自国の「日本化」を防ぐための金融政策を活発に論じる。

この議論はやや一面的で本質を欠く。確かに日銀に有効な手立ては残されておらず、資産価格の上昇率は欧米より劣る。投資家の不満は理解できるが、さえない経済や市場と引き換えに社会が安定している事実を看過すべきではない。

日本経済の長期停滞は、グローバル化の遅れ、不採算企業への政策的支援、手厚い就業者保護などある意味経済の非効率性を放置した結果でもある。皮肉なことにこの非効率性が欧米で顕著な資本家・企業経営者への富の集中を抑制し、各種の再分配政策と相まって日本社会の安定の一因となったともいえまいか。内閣府調査では実に75%の人が現状に「満足」と答えている。諸外国に比べて日本の政治は際立って安定している。

一方で将来不安は大きい。同調査でも将来が「良くなる」と思う人は10%に満たない。現役世代が退職世代を支える賦課方式による社会保障制度が少子高齢化によって疲労し、世代間格差は将来も拡大の一途をたどる。高齢者再雇用や定年制度の見直しが進むが、抜本的解決ではない。

欧米が憂うべき「日本化」は低インフレなどではない。非効率性が社会的安定をもたらす可能性もある。真に憂うべきは、人口動態の変化に社会制度を適合させることを民主政治のもとで怠り、手遅れになることではないか。日本での少子高齢化のように、欧州では移民対応の遅れがすでに本来憂うべき「日本化」を招いているように見える。

(ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直 知哉)

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