2019年7月23日(火)

レオとブラピ、2大スター共演作に大いに沸く
カンヌ映画祭リポート(8)

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2019/5/23 17:00
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今年のカンヌの最大の話題作といえば、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大ハリウッドスター共演、クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」だろう。21日に上映され、22日には3人がそろって記者会見に臨んだ。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の一場面。落ち目の俳優を演じるレオナルド・ディカプリオ(右)と、俳優のスタントマン役のブラッド・ピット

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の一場面。落ち目の俳優を演じるレオナルド・ディカプリオ(右)と、俳優のスタントマン役のブラッド・ピット

同作の舞台は1969年のハリウッド。狂信的なカルト集団が俳優シャロン・テートを殺害した実際の事件を題材にしている。ディカプリオが演じるのは落ち目の俳優リック・ダルトン。ピットはリックのスタントマン、クリフ・ブースを演じる。リックもクリフも実在しない人物だが、この架空のキャラクターが事件にどう絡むのかが最大の見どころだ。

タランティーノ監督は2作目の「パルプ・フィクション」で最高賞のパルムドールを受賞しておりカンヌとは縁が深い。レッドカーペットでもファンから熱烈な歓迎を受けた。会見ではこのカルト集団について「ものすごく研究した。なぜ若い男性や女性を引きつけたのかについて。でも学べば学ぶほど、情報を得れば得るほど、わからなくなっていったけど」と熱く語った。

記者会見に臨む左からブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオ、クエンティン・タランティーノ監督、マーゴット・ロビー(22日、カンヌにて)

記者会見に臨む左からブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオ、クエンティン・タランティーノ監督、マーゴット・ロビー(22日、カンヌにて)

ディカプリオは「この映画は2人の実在しないキャラクターを使って描く、タランティーノ監督によるハリウッドへのラブレターだ」と話した。ディカプリオと初共演となるピットは「とても楽しかった。また共演したい」と笑顔で答えた。

日本公開は8月。当時のジャンル映画、ポップミュージック、そしてシャロン・テート殺人事件について予習しておけば最大限楽しめるだろう。

同じく21日に上映されたのは韓国のポン・ジュノ監督「パラサイト」。近年は米国を拠点に製作していたが、久々に本国に戻ってメガホンを取った。

「パラサイト」の一場面。ソン・ガンホ(左から2人目)が4人家族の父親役を演じる。
(C)2019 CJ ENM Corporation, Barunson E&A

「パラサイト」の一場面。ソン・ガンホ(左から2人目)が4人家族の父親役を演じる。
(C)2019 CJ ENM Corporation, Barunson E&A

全員失業中の一家の長男が、家族の期待を一身に背負い、IT企業を経営する裕福な家に家庭教師の面接を受けに行く。貧する者と富める者。この相反する2つの家族の出会いから、物語は想像を超える悲喜劇へとなだれ込んでいく。

本作に関しては配給会社を通じてポン・ジュノ監督から「お願い」と題する声明が出た。「ネタバレをしないでください」と訴える内容で「すべての監督が望むように、観客にはハラハラしながら物語の展開を体験してほしい。大小にかかわらず、全ての瞬間において、熱く興奮しながら、映画に驚き、映画に引き込まれてほしい」からだと説明した。実はタランティーノ監督も結末を明かさないようメディア関係者に要請し、上映前には映画祭側からアナウンスされた。

2人が声明を出した背景にあるのは、主に欧米メディアによる報道の内容だと思われる。映画祭の期間中、欧米の新聞、雑誌、ウェブメディアは映画祭について連日報道しているが、その中心は作品評。結末に触れて書かれることも多く、観客が予備知識なしに映画を楽しめなくなることを危惧したのだろう。

「パラサイト」も日本公開が決まっている。まっさらな状態で観客に見てほしいという思いを同じくする者としては、これ以上内容についての言及は避けたい。ただ見終えた印象をいえば、本作は「殺人の追憶」「グエムル―漢江の怪物―」「母なる証明」に連なる新たな代表作になった。不平等、階級闘争、南北問題といった社会的、政治的なテーマを、家族の物語を核にしつつ、コメディー、ホラー、ドラマとあらゆる表現手段を駆使して描く手腕はずばぬけている。これまでのコンペ作品の中で最も笑いが起こり、歓声がわき、時にため息が漏れ、上映後には盛大な拍手が続いたことがそれを証明した。

22日昼には「ジャパン・パビリオン」にて10月28日~11月5日に開かれる東京国際映画祭に関する記者会見が開かれた。ゲストとして登場したのは出演作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の公開を控える中国の俳優チャン・ツィイー。同映画祭事務局からツィイーがコンペティション部門の審査委員長を務めることが発表された。

今秋開く東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員長に決まった俳優のチャン・ツィイー(22日、カンヌにて)

今秋開く東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員長に決まった俳優のチャン・ツィイー(22日、カンヌにて)

ツィイーは「とても光栄に思う。映画は現代社会の潮流やライフスタイルを表現するもの。新しい若い才能を発掘していきたいし、俳優なので演技にも注目したい」と抱負を語った。2000年に長編デビュー作「初恋のきた道」が東京国際映画祭で上映され、その後プロモーションで来日した。「観客がとてもあたたかく迎えてくれて(キャリアを積んでいく上で)自信になった。日本には特別な思い入れがある」とも話した。

ツィイーが国際映画祭の審査委員長を務めるのは初めてだ。同映画祭で女性が審査委員長を務めるのは03年の中国の俳優コン・リーに次いで2度目となる。

同日上映のコンペは日本でもよく知られているカナダのグザヴィエ・ドラン監督「マティアス・アンド・マキシム」とフランスのアルノー・デプレシャン監督「オー・マーシー」だった。

ドランは30歳。19歳で発表した監督デビュー作「マイ・マザー」が監督週間で評価されて世界的に注目された、まさに「カンヌの申し子」と言える存在だ。物語は幼なじみの青年マティアスとマキシムが、アマチュアの短編映画の中でキスしたところ、そのシーンが恋人関係や友人関係にヒビを入れる事態となり、悩み葛藤するという人間ドラマ。

単純なプロットだけに、エモーショナルな映像なり、深みのある心理描写なりで見せてくるのかと思ったが、正直期待は外れた。「胸騒ぎの恋人」「わたしはロランス」のころのような、あの鮮烈な映像、話運びはどこへ行ってしまったのか。もうピークアウトしたとは思いたくないのだが……。

デプレシャンは6度目のコンペ入り。実話を元にした犯罪ドラマで、黒澤明監督「羅生門」を想起させる証言の食い違いが、罪を犯した2人の女性の関係を浮かび上がらせる。熟練の演出が楽しめた。

(近藤佳宜)

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