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おもてなし産業は不健康?(十字路)

インバウンド観光が産業として成長する中、日本の"おもてなし"が注目されている。おもてなしを担うホスピタル産業は、宿泊や外食、旅行などの観光業を含めた対人サービスが主役だ。今後の成長が期待される一方、低賃金・長時間労働だけではなく、従業員の健康問題が国際的に懸念されている。

米セントラルフロリダ大学教授のエイブラハム・ピザム氏は昨年、京都大学観光MBAセミナーで2000年以降の全米保健医療統計センターのデータなどを用いてこの問題を論じた。

まず対人サービスに関わる従業員は精神的うつの傾向を示す比率が10.8%と一般産業よりも高い。次にアルコール依存の傾向もあり、バーテンダーやウエートレスの1日平均のアルコール摂取量は多い。さらに飲食サービスに関する職種では肥満の傾向が高く、生活習慣病の遠因となっている。加えて接客や宿泊に関わる職種では離婚率が高い。全米平均17.0%(2000年)に対し、ウエーターは27.1%、客室清掃は26.4%、ホテル受付は25.9%などと高い。

ピザム氏は不健康な傾向は米国に限らず、国際的に共通と警鐘を鳴らす。背景に夜勤を含むシフト勤務によるワークライフバランスの問題、仕事上のストレスの多さ、食物やアルコールなど誘惑の多い環境などがあると指摘する。

零細企業が多いために人事面でのケアも不十分な面もあるだろう。ピザム氏は従業員側の自主的な取り組みだけではなく、経営側も事情を理解して現場の健康を考えたサービス方針の設定や労働環境の整備、予防改善に関するセミナーやプログラムを進めるべきだとする。

おもてなし産業の労働者の健康と安心の水準の高さは生産性に影響する。働き方改革における重要論点だろう。

(京都大学経営管理大学院教授 若林直樹)

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