2019年6月26日(水)

ソフトバンクG、損失回避なるか 米通信合併が前進

ネット・IT
2019/5/21 22:21
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ソフトバンクグループ(SBG)の米通信子会社スプリントと同業TモバイルUSの合併計画が前進した。米連邦通信委員会(FCC)のトップが合併承認の意向を示した。SBGは、負債4兆円超を抱え単独での生き残りが難しいスプリントをこれで子会社から外す予定だ。独占禁止法の観点から合併の可否を判断する米司法省の判断が先行きを左右する。

「合併は公益にかなう」。FCCのパイ委員長が2社の合併を評価する声明を公表した20日、スプリント株は19%上がった。2社は同日、低所得者が使うプリペイド式携帯の事業を切り離すなど、消費者の便益保護を求めるFCCの方針に沿った計画を提出。これがパイ氏の発言を引き出した。

21日の東京株式市場では、スプリント株の84%を保有するSBGの株価も3%超上がった。一転して合併に前向きとなった当局トップの意見表明の影響は大きかった。

SBGにとって「スプリント問題」は大きな経営課題の一つだ。スプリントの積み上がった有利子負債は4兆円を超え、グループ負債の3割を占める。

孫正義会長兼社長は「(スプリントを含め)子会社の負債は親会社として弁済する義務が無い。SBGの純負債は4.4兆円だ」と強調する。連結ベースの財務諸表では、スプリントへの出資比率は合併が実現すれば約27%になり、身ぎれいになる。

「端的に言えば、スプリントは競争力を維持できない」。4月15日、同社がFCCに提出した書類には、単独では生き残れない窮状を訴える「自己否定」の文言が並んだ。通信網は競合に見劣り、解約率は他社の2倍にのぼり、財務は負債利払いが投資を圧迫する。

2019年3月期決算では純現金収支が11億ドルの赤字(前期は8億ドルの黒字)に転落した。証券アナリスト予想では20年3月期の収支も10億ドル程度の赤字が続く見通しだ。20年3月期は43億ドル、21年3月期は54億ドル分の債務が償還期限を迎える。投資余力は限られる。

SBGにとって最悪なのは合併できずに成長戦略を描けないスプリントを子会社として抱え続けることだ。支援が必要になればスプリントは「金食い虫」となり資産価値が下がればSBGは損失計上を迫られかねない。

次世代通信規格「5G」の商用サービスが始まった米国では、新たな通信インフラ整備の投資競争が待ったなし。足元の投資停滞は会社の将来を閉ざしかねない。

投資会社の信用力を担保するのは投資対象の株式価値だ。SBGの格付けを「投機的等級」としているムーディーズ・ジャパンの格付け担当アナリストの柳瀬志樹氏は「Tモバイルとの合併が正式に決まれば、スプリントの株価上昇を通じてSBGの信用力向上につながる」とみる。

保有株式価値27兆円を抱えるSBG。13年に買収したスプリントの価値は2.8兆円と1割を占める。同社の企業価値が目減りし損失リスクが具現化すれば、SBGの投資会社としての船出に冷や水を浴びせかねない。

5G競争を優先 米通信委承認へ
 【ニューヨーク=中山修志】米連邦通信委員会(FCC)がスプリントとTモバイルUSの合併を容認する意向を示したのは、次世代通信規格「5G」を巡るグローバル競争を重視する考えからだ。FCCのパイ委員長は20日の声明で「最優先事項は地方のデジタル格差の解消と5Gにおける米国のリーダーシップの推進だ」と明言した。
FCCはこれまで通信大手4社体制の維持を重視してきた。だが投資負担の重い5Gの時代を迎え、投資を効率化できる合併計画を認める判断に傾いた。
 ただ合併の実現に向けては、米司法省の承認も得る必要がある。同省は競争法上の問題がないかを判断する。米メディアでは両社の合併に難色を示しているとの見方も出ており、先行きは予断を許さない。
 仮に合併が実現したとしても、新会社の経営には縛りがかかる。両社はFCCに対し、合併後3年間は料金を値上げしない方針を伝えている。加えて今回、投資効率が低い農村部での通信網の整備計画も約束した。計画が未達となった場合、「米財務省に数十億ドルの支払いが発生する可能性がある」(パイ委員長)という。

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