2019年9月21日(土)

中国・万達 復活へ巨額投資 商業施設など最大2.6兆円
党の思惑に配慮、債務拡大リスクも

2019/5/21 23:00
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【北京=渡辺伸】中国の商業不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)が攻めに転じている。積極的な海外投資でつまずいた同社は資産圧縮で財務が改善したとして、最大1600億元(2兆6千億円)を視野に入れた商業施設やテーマパーク開発に乗り出す。東北地方を振興したい共産党の思惑に寄り添う形だが、再び債務が拡大するリスクもある。

万達が国内約280カ所で運営する商業施設「万達広場」(遼寧省瀋陽)

「中国の東北地方は大きな投資がないと思われがちだが、発展する未来がある」。万達の王健林董事長は5月中旬、東北地方の遼寧省瀋陽市で開いた事業の調印式で、地元政府の幹部をこう持ち上げてみせた。

800億元を投じ、5つの商業施設や高級ホテル、テーマパークなどを建設する。完工時期は不明だが、今年夏に着工する。

有力産業がひしめく中南部と比べ東北地方は国有企業が多く、低い成長率が中国経済の足かせとなっている。習近平(シー・ジンピン)国家主席は2018年9月、遼寧など東北3省を訪れ「(民間企業との連携など)経済の開放を進めろ」と檄を飛ばした。万達の大型投資はまさに政府の東北振興策をなぞった形だ。

万達は4月以降、投資計画を相次ぎ発表している。内陸部の甘粛省では今後3年間で約450億元を投じて商業施設やホテル、テーマパークを開業する。広東省でも200億元を投資する。

内陸部の陝西省延安市では120億元を投じ「紅色のテーマパーク」と称する施設を21年に開業する。中国建国前に毛沢東ら党の幹部が一時拠点を置いていたため「共産党革命の聖地」と呼ばれる土地で、歴史や文化を学ぶ劇場などをつくる。

万達は1988年の創業後、主力の商業施設「万達広場」を全国展開し、中国の高度成長に伴い急成長した。中国政府の海外M&A(合併・買収)を奨励する「走出去(海外に打って出る)」という掛け声に乗り、米映画館チェーンや映画製作会社などを次々と買収し、買収総額は200億ドル(約2兆2千億円)を超えた。2016年にテーマパーク事業に本格参入し、中国各地に建設した。

だが17年に入り中国当局は金融機関に対し、万達への融資を制限するよう通達し、万達には資産売却と借金返済を迫った。大型の海外買収を黙認すれば、資本流出と人民元安が加速しかねないとの危機感からだった。

万達は19年までに77カ所のホテルや13カ所のテーマパーク、百貨店など1300億元を超える資産を売却した。同社は16年に中核事業会社の上場を廃止しており最終利益などは不明だが、18年12月期の売上高は2142億元と2年間で16%減少。総資産も22%減った。

復活を狙った今回の巨額投資には、政治的な配慮が見え隠れする。「中国経済の減速を食い止めたい党の思惑に応える国内投資を打ち出すことで、当局から融資を引き出したのでないか」と業界関係者は読み解く。

万達は一連の投資について「(金融機関が定める)債務上限を超えることはない」と説明する。事業売却で得た資金を借入金の返済に充て、18年12月期の有利子負債は17年比で30%減った。「資産を減らし、外部企業の出資を利用する『持たざる経営』の効果が出ている」(万達)という。

だが事業環境には逆風が吹く。国家統計局によると、商業分野(小売店、ホテルや飲食など)の不動産投資は18年に2年連続で減少した。中間層の拡大に伴い2000~14年は前年比2~3割増のペースで伸びたが、消費意欲が頭打ちとなるなか、ネット通販の台頭も商業施設の成長にブレーキをかけている。

北京市の会社員、屈さん(30)は「ここ数年は1年に一度も店舗に行っていない。買い物は全てネット通販だ」と話す。

「商業施設はすでに飽和状態にある。住宅投資よりも資金回収に時間がかかるのが難点だ」(不動産コンサル会社、同策房産の張宏偉氏)。融創中国や中国恒大集団など競合の不動産大手は近年、住宅に投資を集中している。

テーマパーク産業の集客は伸びているが、競争は激しい。21年にはユニバーサル・スタジオ北京が開業予定で、レゴランドも上海などに開業する見通しだ。もともと万達のテーマパークは「人気のあるキャラクターがいない」(大連市の30歳代会社員)と評価が芳しくない。復活をかけた積極投資の成否はみえていない。

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