2019年6月20日(木)

新興企業狙う青田買い防止 公取委方針、GAFA念頭

経済
2019/5/21 23:00
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独占禁止法に基づく企業のM&A(合併・買収)審査で、将来の寡占をどうみるかが課題となっている。今はIT(情報技術)大手などが急成長する企業を高額で買収して、将来の寡占を狙う行為を止められない。公正取引委員会は新たに買収額を審査して「青田買い」を防ぐ方針だ。IT大手が強すぎて新しい企業が育ちにくいとの懸念から競争環境を整える。

日本のM&A審査は現状の分析が中心だ。まずは製品やサービスの市場を決めて、M&Aによってその市場でのシェアがどう変わるかを見る。実現すると市場で価格への強い支配力を持つ場合、公取委は合併を認めなかったり、計画を変更するよう求めたりする。

この手法はすでに市場で一定のシェアを持つ企業同士のM&Aなら適切に判断できる。今はスタートアップ企業が数年で大きなシェアを持つことがある。デジタル分野のサービスは普及が速いためだ。仮にIT大手がこうした企業を早期に買収すれば、将来の寡占を先取りすることになる。

公取委は今はこのような動きに対応しきれないとみて、新たに「買収額」を審査の対象にする方針だ。M&Aに関する運用指針である「企業結合ガイドライン」に、買収時の価格も審査する内容を明記する案がある。IT企業などが持つデータの経済的価値の評価も盛り込む方針で年内をメドに議論を進めている。

買収金額の基準などは示さない見通しだ。企業の売上高や利益からみて巨額な買収になる場合、買い手企業が何らかの価値を見いだしていると判断する。買収額をきっかけに買い手の意図を深掘りし、競争に与える影響を多角的に分析する。

対象として想定されるのが「GAFA」(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)などによる新興企業の買収だ。

フェイスブックは14年にライバル候補だった対話アプリの「ワッツアップ」を約218億ドル(約2兆4千億円)で買収した。今ではグループのサービス全体で月間平均20億人超のユーザーがいる。16年にはマイクロソフトがビジネスSNS(交流サイト)のリンクトインを高額で買収した。

米国ではGAFAが潜在力のある若い企業を次々と買収している。最先端の人工知能(AI)分野の企業買収が活発だ。市場の寡占が進むと、スタートアップ企業がIT大手に対抗するのは難しくなる。新しい企業が育ちにくくなったことで、米企業の開業率は過去40年で最低水準に下がった。技術革新の源泉となってきた産業の新陳代謝が衰えかねないと懸念する声が出ている。

将来の売却を見越した起業でも新サービスが生まれることに変わりはない。IT大手が巨大化するだけで、スタートアップの競争条件は厳しくなるとの指摘がある。

欧州連合(EU)でもM&A審査への関心が高まっている。ドイツやオーストリアは審査対象を売上高で決めていたが「買収時の価値」も基準に加えた。競争環境の整備は世界で大きな論点になっている。

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