2019年6月16日(日)

タタ自動車が巨額赤字 19年3月期最終、ジャガー売却観測

自動車・機械
南西ア・オセアニア
ヨーロッパ
アジアBiz
2019/5/20 22:14
保存
共有
印刷
その他

【ムンバイ=早川麗】インド自動車大手のタタ自動車が厳しい状況に追いやられている。20日発表した2019年3月期の最終損益は、2882億ルピー(約4550億円)の大幅な赤字となった。前の期は898億ルピーの黒字。最終赤字は金融危機で販売が大きく落ち込んだ09年3月期以来となる。英子会社ジャガー・ランドローバー(JLR)が中国での販売不振などを理由に約4340億円の減損損失を計上したことが響いた。JLRの売却観測も浮上している。

英子会社ジャガー・ランドローバーは4月に約1週間、英国の工場を停止した(1月、英リバプール)=ロイター

英子会社ジャガー・ランドローバーは4月に約1週間、英国の工場を停止した(1月、英リバプール)=ロイター

「(JLRを売却するという)臆測報道が出るたびに、我々は(それを否定する)同じコメントを出して答えている」

タタ自のPBバラジ最高財務責任者(CFO)は20日の決算会見で、JLR株の売却について改めて記者から問われると、こう答えてみせた。

実際、JLRが2月に4000億円近くの減損を発表して以降、同社の売却話が続いている。中国の業界専門紙が2月、「中国大手の長城汽車がジャガー買収に向けタタと接触」などと報じたほか、5月にも英通信社ザ・プレス・アソシエーションが「グループPSAが、JLRの買収に向けタタと詰めの協議をしている」と報じるなど、売却観測が飛び交っている。

それもそのはず、タタ自の100%子会社であるJLRは、これまでグループ全体の利益を支えてきたが、最近は販売が落ち込み、19年3月期も大きく足を引っ張ったことが背景にある。

JLRは19年3月期、約31億ポンド(約4340億円)の減損損失を計上した。今後の売上高や利益の見通しを下方修正し、資産を再評価したためだ。内訳は工場設備や不動産など有形固定資産で約15億ポンド、無形資産で約16億ポンドという。

JLR不振の主因は中国での販売悪化だ。米英で8%増となるなど好調だった地域もあるが、中国では34%も販売が減った。同社の中国の販売店はもともと地方都市に多く、最近の景気悪化の影響をもろに受けている。

しかし、それでも一定の販売台数は確保する必要があるため、競合する高級車に比べ、大幅な値引きをしながら販売を続けざるをえず、収益悪化の悪循環を招いているというのが現状だ。

会見で、バラジCFOは「中国販売は7~9月期にもプラスに転じるだろう」と回復に自信を示した。だが、足元の4月の中国販売も前年同月比13%減と大きく減らしており、バラジ氏の話も説得力に欠ける。

むしろ、JLRが本社を置く英国でも欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感があり、4月には英国内の工場を約1週間も操業停止するなど、先行きは一段と厳しさを増している、と見るのが一般的だ。それが、JLRの売却観測に拍車をかけている。

タタ自動車は2008年に、米フォード・モーターからJLRを約2300億円で買収した。JLRは18年3月期までの9年間はなんとか利益を出し続け、タタ自の本体が赤字の時期もグループ全体の利益を支えたのは確か。だが今の状況では、もはやJLRに多くは望めなくなった。

米中貿易戦争が続くなか、JLRも主力としてきた中国での販売低迷は今後も長引くことが予想される。今回、巨額損失を計上したが、市場ではさらなる利益の下押し要因も生まれかねないと見る向きは少なくない。

 タタ自動車は20日午後4時半(日本時間午後8時)からインド・ムンバイ市内で2019年3月期決算の記者会見を開いた。PBバラジCFOら経営陣との主なやり取りは以下の通り。
 ――タタ自動車による英子会社ジャガー・ランドローバー(JLR)株式の売却観測が持ち上がっていますが、その件について真偽を確認させてください。
 バラジCFO 「観測報道があるたびに同じ答えを言っている。臆測にはコメントしないが、噂に真実はないと断言できる」
 ――ということは、売却の考えはないという理解でいいですか。
 バラジ氏 「それでいい」
 ――(低迷する)中国での今後の販売見通しは、いかがでしょうか。
 バラジ氏 「新モデルの販売も予定しており、7~9月期にもプラスに転じるだろう」
 ――インド市場も足元では減速しているが、現状認識と、先行きについて教えてください。
 乗用車事業トップのマヤンク・パリーク氏 「直近10カ月ほどは業界全体は減速している。だがタタ自としては、地方での販売が伸びている。1月発売の新型の多目的スポーツ車(SUV)などは好調で、先行きには自信を持っている。ただ、20年春に予定される厳しい排ガス規制の導入をどう乗り越えるかが、(販売拡大の上で)大きな挑戦になる」

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報