2019年6月26日(水)

川崎重工、事業選別先送り 撤退基準を撤廃
鉄道・造船改革は周回遅れ

自動車・機械
2019/5/20 22:51
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川崎重工業は20日、不採算事業の存廃を判断するための撤退基準を撤廃すると明らかにした。2018年度までの中期経営計画では、一定の利益率に達しない事業からは撤退を検討するとしてきた。基準未達が相次ぐなかでも選別を先送りしてきた実態に合わせたとみられ、経営の規律が緩みかねないとの見方が出ている。

新たな中期経営計画を発表する川崎重工業の金花芳則社長(20日、東京都港区)

川重は16年度から3年間の中期計画で、撤退基準の明確化をポイントにしていた。具体的には、株式の発行や借り入れを通じて集めたお金でどれだけ利益を生んだかを示す「投下資本利益率(ROIC)」が8%に満たない事業からは撤退を検討すると表明。16年に就任した金花芳則社長は「8%は社内の絶対的な法律だ」と強調していた。

川重の目標は低くはないとはいえ、18年度の実績は主力6部門のうち航空宇宙、船舶海洋(造船)、鉄道車両の3部門が8%を下回った。

20日に発表した21年度までの新たな中期経営計画では営業利益を1000億円以上と18年度より5割強増やす目標を掲げた。水素関連技術や医療ロボットなど付加価値が高い分野で外部連携もしながら収益力を高める。30年度の売上高を約3兆円と9割近く増やす長期目標も示した。

ただ、金花社長は「事業の選択と集中が進んでいないのは事実」としながらも撤退基準は示さず、検討課題にとどめた。

不振部門の筆頭は鉄道車両だ。17年に新幹線の台車で亀裂の発生するトラブルが発生し、製造段階の不備があったと認定された。さらに米国鉄道向け車両の採算悪化などで、17年度から2年連続で100億円以上の営業損失を計上した。撤退も検討したが、最後は同部門出身の金花社長が主導する形で「再建は可能」と判断して見送った。

受注減が続く造船では、13年に三井造船(現三井E&Sホールディングス)との統合を模索するなど、事業再編の絵を描いたこともあった。だが統合交渉を主導した当時の社長は、社内の猛反発を受けて更迭された。結局、川重はこの3年間、大規模な事業再編には踏み切っていない。

市場の評価は厳しい。例えば三井造船との統合が破談になった13年6月に比べ、株価は直近で2割強下落した。日経平均株価は同期間に6割上昇したのと対照的だ。今回、撤廃基準を示さなかったのも「構造改革に消極的な印象を与える」(国内証券アナリスト)。

川重がもたつく間に同業他社は動いている。

鉄道では、15年に中国の大手2社が合併して世界最大の車両メーカーが誕生した。日立製作所は15年に伊鉄道車両・信号メーカーを買収。鉄道システム全体を幅広く提供できる体制を構築しているが、川重は車両の提供にとどまる。

日立はあらゆるモノがネットにつながる「IoT」事業へのシフトを鮮明にし、日立化成など上場4子会社の再編に乗り出した。独シーメンスも事業の5割を入れ替えるなど事業再編が進む。IHIも祖業の造船に見切りを付け、航空機事業に活路を見いだそうとしている。

ある外資系証券アナリストは「新幹線の不備のような重大案件は会社を変えるチャンスだった。川重は決断力が鈍いのではないか」と語る。なぜ決断できないのか。事業部門ごとの独立性が高く「本社がコントロールできていなかった」と川重社員は説明する。

 川崎重工業の事業の中でも好調を維持しているのが建設機械に使う油圧機器やロボットだ。自動車工場などに使う高機能ロボットを作れるメーカーは限られる。2018年度の同部門の投下資本利益率は約20%だった。

21年度までの中期経営計画でも有望分野と位置づけ積極的に育成する方針だ。油圧機器は増産準備を進めており、ロボットでは手術支援分野への参入を計画している。だが、これらの得意分野でもいずれは中国勢などの追随が予想される。

川重の連結営業利益は18年度に640億円と、直近の底だった2年前から改善が続く。それでも3年前に比べると3割以上少ない水準だ。折しも世界景気は不透明感を増している。本格的な減速局面でも生き残れる体質づくりが課題になる。

(福本裕貴、西岡杏)

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