住宅・公共事業頼みのプラス成長、1~3月GDP 消費・設備投資減少 - 日本経済新聞
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住宅・公共事業頼みのプラス成長、1~3月GDP 消費・設備投資減少

景気を支えてきた内需のけん引力が低下している。内閣府が20日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は年率で実質2.1%増となったが、内需の柱である個人消費と設備投資はマイナスになった。住宅投資や公共事業の増加で穴埋めしたが、在庫要因を除いた内需全体はゼロ成長だった。米中貿易摩擦で外需は不透明感が拭えない。内需まで勢いを失えば景気回復シナリオに黄信号がともりかねない。

日本経済は2018年7~9月期に相次ぐ自然災害でマイナス成長を記録した。10~12月期は堅調な個人消費にけん引され、プラス成長に戻った。19年1~3月期は事前予想でマイナス成長が多かったが、前の期を上回るプラスになった。ただ、設備投資や消費をみると景気は楽観できない。

18年度のGDPは物価変動の影響を除いた実質ベースで0.6%増と、4年連続のプラス成長を達成した。通年での寄与度は内需が0.7%、外需がマイナス0.1%。堅調な内需が景気を引っ張る構図だが、足取りには重さが見え隠れする。

1~3月期の実質成長率は0.5%で、このうち外需分が0.4%。内需分は0.1%にとどまり、18年10~12月期の0.7%から落ち込んだ。

1~3月期の内需の内訳をみると、GDPの半分以上を占める個人消費が0.1%減った。企業の設備投資も0.3%減となった。いずれも2四半期ぶりのマイナスだ。一方で消費増税前の駆け込み需要があったとみられる住宅投資が1.1%増えた。公共事業も防災対策で1.5%増えた。家計や企業の動きは弱いが、政策対応で何とか補っている姿がうかがえる。

個人消費は暖冬の影響で衣類などの販売がふるわなかった。自動車などの耐久財も伸びなかった。働き手の報酬が伸び悩むなかで、食品や一部サービスで相次ぐ値上げが消費者心理に影を落としているとの見方もある。内閣府幹部は「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はしっかりしているが、マインド面から消費や投資に弱い動きがみられる」と分析した。

増勢の住宅投資も過去の消費増税前と比べると駆け込みの動きは鈍いとの見方がもっぱら。全体としてみれば、内需の伸びは民間の在庫変動の寄与(0.1%)を除くとゼロ成長になった。

成長率を押し上げているように見える外需にしても、実際は輸入の大幅な減少が計算上プラスに働いているにすぎない。品目別に貿易統計をみると、原油や天然ガス、木材や鉄鉱石などのエネルギー・原料の輸入が減った。一般に企業活動が鈍れば、エネルギー関連の需要も落ちる。企業の国内での生産活動が停滞しつつある可能性がある。

米中の貿易摩擦で外需には不透明感が漂い続けているだけに、内需の持続力が景気のカギを握る。「内需の増加傾向は崩れていない」。茂木敏充経済財政・再生相はGDP速報値の発表後の記者会見でこう語った。そのうえで個人消費や設備投資の落ち込みは「前期の反動によるところもある」と説明した。

いずれにしても今回、1~3月の実質成長率が市場予測を上回り、2四半期連続のプラスを保ったことで、景気の息切れ懸念がひとまず薄れたのも確かだ。ただ、貿易摩擦が一段と激化する懸念は残り、10月に予定される消費増税をにらんで節約志向が強まる可能性もある。政府が24日に公表する月例経済報告で示す公式の景気認識が大きな焦点になる。

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