不漁読み仕入れ「的中や」 昆布不足、知恵絞る業者
とことん調査隊

関西タイムライン
2019/5/21 7:01
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江戸時代に北前船で昆布を北海道から調達してきた伝統を持つ関西の昆布業界。いま産地の北海道で昆布が4年連続の不漁となり、深刻な原料不足に陥っている。道南産昆布の卸値は5年で約2倍になり、業者の値上げで小売価格も平均1割上昇した。もともと家庭の需要が減っていたところの苦渋の値上げで、一段の昆布離れを引き起こしかねない。危機を乗り切るため昆布業者はどう対応しているのか。ユニークな取り組みはないか、取材した。

まずは浪速の台所、大阪市中央卸売市場を訪ねた。東側の関連棟1階の昆布店、元木(大阪市福島区)の店頭をのぞいてみると、目を疑った。羅臼産山出し昆布(500グラム5180円→4500円)、根室・貝殻島産早煮昆布(200グラム1290円→1000円)。「昆布が期間限定で割引セールしてある!」

なぜできるのか社長の元木弘英さんに聞くと「ないはずの昆布がうちにはあるからね」といって、市内の倉庫を案内してくれた。道南産や羅臼産昆布がずっしりと保管してあった。

「僕は潔癖症で借金は嫌いやったけど、4年ぐらい前に昆布が本当に危ないという話を聞いて、借金してでも持てるだけ在庫を持った。この判断がずばり的中や」

帳簿を見せてもらうと昆布の在庫は2006年で5000万円だったが、現在は1億2000万円。昆布は賞味期限がなく、管理すれば長期保存が可能だ。安い時期に昆布を購入したため原価も安く、昆布のつくだ煮も一切値上げしていないという。「値上げで昆布が売れへんようになっても困るしね。19年産も不作が続くよ」。昆布を求めて早朝から客が来店していた。

次に昆布問屋が多い大阪・天満橋かいわいに赴いた。そのうちの一社、天満大阪昆布(大阪市北区)。同社の昆布不足での対応は、少ない昆布で最大限ダシを引き出す商品の提案だ。通常、昆布はひと固まりでお湯につけてダシをとるが、ここでは1ミリサイズの細い短冊状にした昆布商品を扱っていた。細く刻んで断面積を増やすことが狙いで、ダシのとれ方が従来比37%アップするという。

「昆布が足りない時代だからこそ、新しい食べ方を提案したい」という喜多條清光社長。ダシのほか、水でつけて飲み物としてもそのまま飲めるのもアピールポイントだ。変革する意味も込めて、みじん切りの商品は「昆布革命」と名付けている。

昆布危機で全く違うアプローチを取るのが日高食品工業(兵庫県姫路市)だ。「原料不足も痛いが、昆布は現役世代が家庭で調理しなくなり需要も減っている。砂漠に水をまく程度かもしれないが、できることをやっていきたい」(河崎広信社長)と、18年12月に観光客が集う姫路城の近くで昆布のアンテナショップを開設。情報発信で昆布の知識を広めて、需要開拓を目指している。

「最近はジャンクフードも多いし、伝統食に接する機会は大事ですね」と同店を訪れた親子連れの40代男性。日高食品は通販で昆布をイメージしたTシャツ「ノー昆布、ノーライフ(昆布なしじゃ生きられない)」も売り出し、話題作りにも注力する。

昆布の値上げ回避や、徹底活用、需要開拓の試み――。一律に値上げや商品改定するのではなく、危機の中でも様々な対応をとる業者がいることが確認できた。関西の昆布業界は北前船で西回りの日本海ルートが確立した17世紀から続いているとされる。業界が長く生き残ってきた一端が垣間見えた。

北海道の昆布不漁の一因は地球温暖化による海水温上昇の可能性が指摘されている。日本昆布協会(大阪市)がロシア産の輸入に向けて調査を開始するなど北海道の長期不漁に向けた対応も始まっている。

(山本修平)

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