2019年8月22日(木)

ウクライナ議会選前倒し タレント大統領が就任、表明
経済改革へ基盤固め

2019/5/20 16:00 (2019/5/20 21:21更新)
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【モスクワ=小川知世】ロシアとの紛争を抱えるウクライナで20日、4月の大統領選で当選したタレント出身のウォロディミル・ゼレンスキー新大統領(41)が就任した。同日の就任演説で、最高会議(議会)を解散すると表明した。早期に政権基盤を固め、経済改革やロシアとの対話を急ぎたい考えだが、いずれの課題も難航は必至で、政治経験のない新大統領には試練の船出となる。

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20日、議会で宣誓するゼレンスキー新大統領(ウクライナの首都キエフ)=ロイター

20日、議会で宣誓するゼレンスキー新大統領(ウクライナの首都キエフ)=ロイター

ゼレンスキー氏は20日に首都キエフの議会で実施した就任演説で「議会を解散する」と宣言し、10月下旬に予定されていた議会選を前倒しする意向を示した。正式手続きを経て7月にも解散、選挙を実施する見通しだ。

演説で最優先課題は「戦火を止める」ことだと述べ、東部で続く親ロ派武装勢力との紛争解決を目指す構えを示した。「ウクライナはひとつだ」と団結を呼びかけ、改革推進へ支持を求めた。

就任と同時に解散を宣言した背景には、支持率が高いうちに議会で一定の勢力を固め、政策決定で主導権を握る狙いがある。ゼレンスキー氏は自らの政党を立ち上げたばかりで現議会に足場がない。外相など重要閣僚人事も議会の承認が必要だ。解散の要件を満たしているか不透明な部分があり、議会側との協議が必要になる可能性もある。

ゼレンスキー氏は4月21日の決選投票で73%を得票し、対抗したポロシェンコ前大統領に圧勝した。相次ぐ汚職事件や物価高による生活圧迫、長引く紛争に対する不満を背景に支持を集めた。

内政の課題は多い。ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島の併合を宣言した。ウクライナ東部では親ロ派武装勢力が伸長し、ウクライナ政府軍との衝突が続いている。15年にマイナス9.8%まで落ち込んだ実質成長率は18年に3%台に持ち直したが、インフレ率は年率10%前後で推移する。17年の1人当たり名目国内総生産(GDP)は約2400ドル(約26万円)と、欧州で最低水準だ。農業や石炭採掘などに続く有力な産業の育成が遅れ、安定成長は描けていない。

国民の期待は生活改善策に集まる。新大統領に望む政策を聞いた4月の世論調査では「公共料金の引き下げ」が最多で39%だった。こうした声を受け、ゼレンスキー氏も引き下げをガス会社や政府に求める構えだが、構造改革を支援する国際通貨基金(IMF)との合意に逆行しかねない。

ゼレンスキー氏は経済の再建を阻む汚職の撲滅を訴えてきた。演説では議員の訴追免責権を廃止する法案や、不正な蓄財を禁じる法案の採択を議会に求めた。一方、大統領選で支援を受けたされる大富豪のコロモイスキー氏が16日、2年ぶりに帰国した。同氏はポロシェンコ前政権と対立し、国外に逃れていた。

最重要課題の対ロ関係が前進する兆しはない。ロシアはウクライナ東部で親ロ派武装勢力を支援し、ウクライナ政府軍との戦闘が続く。大統領選直後の4月下旬、ロシアは東部の親ロ派支配地域の住民を対象にロシア国籍の取得手続きを簡略化した。ウクライナの新政権を揺さぶる狙いだ。

ゼレンスキー氏はドイツやフランスの仲介を得てロシアとの対話の可能性を探り、事態打開の糸口を探る考えを示している。演説で「対話の用意がある」と語り、ロシアが併合を宣言した南部クリミア半島やウクライナ人の捕虜を奪還すると強調した。ロシアはクリミアについて「議論は終わった」(プーチン大統領)と譲らない立場で、対話が始まったとしても協議の難航は必至だ。

人口約4500万人のウクライナはロシアと欧州の間に位置する地政学上の要衝だ。14年に親ロ派政権が倒れ、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)へ加盟を目指す路線を強めた。ゼレンスキー氏も就任演説で「我々は欧州への道を選んだ」と述べた。

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