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「わずかな変化も見逃さない」竹林氏(運用の達人)

2019/5/23 12:00
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投資信託の運用を担うファンドマネージャーは、目まぐるしく変化する相場と常に向き合い、成績向上を目指して格闘する運用のプロだ。「達人」の相場観や実績に裏打ちされた信念は、資産形成に取り組む個人投資家にとってもヒントになる。

今回話を聞いたのは、大和証券投資信託委託で「ダイワ日本好配当株ファンド」などを運用する竹林正喜シニア・ファンドマネージャー。運用スタイルは、国内の株式を対象としたバリュー投資(割安株投資)だ。銘柄選びや運用のプロセスなどを聞いた。

――足元の株式相場をどうみていますか。

「昨年末にかけて米中貿易摩擦への警戒感から世界の株式相場が大きく下げたのは、健全な調整だったと考えています。懸念は解消していませんが、景気はそれほど悪くありません。米中で政策対応の動きもあり、今後はこれらの明るい材料に反応する場面が増えていくのではとみています」

――リーマン・ショックから10年たちました。

「これからも金融危機後の大規模な政策対応のひずみが表面化する場面はあるかもしれませんが、そこまで深刻な事態にはならないでしょう。過去の大きなショックの前には市場で過度の楽観論が支配的だったのに対して、今は慎重論も入り交じっています。この10年間でいくつかの調整局面をくぐり抜け、ある程度あく抜けしてきていると思います」

――1日の業務の流れを教えてください。

「午前中から午後3時ごろまでは個別企業を取材したり、会社説明会に参加したりします。決算発表シーズンは午後3時以降に各社の業績資料をチェックします。投資先かどうかや業種・規模にこだわらず、決算発表した会社は全銘柄を一通り確認し、見落としている企業がないか注意深く見ていきます」

「決算発表のシーズンが過ぎたら、取材が業務の中心になります。主に決算データを見て気になった会社に足を運び、変化が起きた事象の背景や理由などを聞いて投資判断の材料にします。訪問するのは年間で100~200社程度です」

――重視する指標は。

「株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)、配当利回りなどです。オーソドックスなデータを丹念に拾っていき、それぞれ過去の平均値や同業他社と比べてどうかという観点で確認します。その会社が期初に立てた計画の進捗率や、市場予想との乖離(かいり)率などもチェックします」

「表面的な数字だけでなく、そこに何があるかを考えます。同じ数字でも背景が違えば投資判断も変わってくるからです。例えば、配当利回りが同じくらい高い銘柄でも、株価が低迷した結果としてそうなった場合と、株主還元を意識して配当を多くしている場合があります」

――工夫していることは。

「決算データのチェックには、自分が見やすいようにカスタマイズした資料を使っています。縦方向に銘柄をリストアップし、横方向に売上高や営業利益などの様々な指標の推移をグラフにして並べたシートです。割安銘柄を対象にしたバリュー投資は変化の兆しに気づくことが大切なので、数値を視覚化することでわずかな変化も見逃さないように工夫を重ねています」

――組み入れ銘柄の成功例を教えてください。

「ある化学の素材関連企業は2014年に設備投資のための公募増資をした後、情報発信や広報活動が不十分だったことでマーケットから評価されていませんでした。しかし業績が計画比で上振れていたのが気になったので、取材を申し込みました。調査・分析をした上で投資先に組み入れ、対話しながら企業価値向上を促す『エンゲージメント活動』でも関与するようになり、そこから株価が徐々に上昇してファンドのパフォーマンスに大きく貢献しました」

――失敗例はありますか。

「ドラッグストアの成長力を見誤り、投資機会を逃したことがありました。アナリスト時代に担当していた分野だったので、先入観や思い込みにとらわれていたのです。どんな時もバイアス(偏り)をかけず、常に冷静な目で立ち向かうことの大切さを身に染みて感じました」

――ファンドマネージャーに必要な資質は。

「好奇心と謙虚な姿勢です。どんな仕事でもそうかもしれませんが、避けられない厳しい局面があります。それを乗り切るには社会の変化、ビジネス構造の変化など新しいものに関心を持ち続けることが助けになります。悲観の中でも次の投資につながるきっかけは見つかります。また、市場に対して謙虚に向き合うことで、周りに振り回されることなく、物事を冷静に受け止められます。常に前向きなスタンスでいられるように自分の気持ちを整えていれば、安定的なパフォーマンスを上げやすくなると思います」

(QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

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