2019年6月27日(木)

キューバ、米制裁で苦境一段と 国外流出も加速

トランプ政権
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2019/5/18 7:21
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米の制裁拡大でキューバが一段と苦境に立たされつつある。関係の深いベネズエラからの経済支援減少でもの不足が続く中、米政府が接収資産を巡る訴訟を解禁したことで、外国企業の投資や貿易が減る恐れが出ているからだ。厳しい環境に耐えられず、米国などへ向けた国外流出の動きも加速しており、混乱を引き起こしている。

コメを買うために国営商店では長い列ができる(10日、ハバナ)=ロイター

首都ハバナ旧市街から車で20~30分。西側に広がる新市街の住宅地にある国営の精肉店は午前10時だというのに照明が消されたままだった。「売るものは何もないよ」。50代の男性店主が話すように、空のガラスケースは乾ききっていた。

各国の大使館や公邸も近い新市街海側のスーパー。外国人と一般国民が使う通貨を分ける二重通貨制を敷くキューバで、外国人用通貨が主流の"高級"店だ。国営店の数倍の値段で品ぞろえは充実しているが、それでも輸入鶏肉の販売には店外まで長い列が続く。「私が先よ」「私だわ」。別の売り場では品薄の商品を巡り怒声が飛び交う。

米が制裁を強める中、キューバが経済的に困窮している。かつて後ろ盾だった旧ソ連が崩壊すると、キューバは反米主義で共同歩調を取るベネズエラから安価な原油供給や、医師など専門人材の見返りに受け取る派遣料といった支援で経済を支えてきた。

しかし、ベネズエラはマドゥロ政権の下で混乱が続き、原油供給はピークの半分以下に落ち込んだ。派遣料の支払いも遅延が続く。慢性的な外貨不足に小麦や鶏肉など輸入食料の供給が厳しくなっている。共産党機関紙「グランマ」もページ数を減らしたほか、10日には鶏肉、卵、衛生用品などの購入制限が発表された。

経済の先行きはさらに暗くなりそうだ。米は2日にキューバ政府が革命後に接収した財産に関する訴訟を解禁した。すでにキューバ石油公社(CUPET)だけでなく、米クルーズ船運行会社カーニバルも接収された港湾を利用しているとして訴えられた。訴訟リスクの高まりから、外国企業による投資や取引の中止、縮小が予想される。

米は同時に米国民の渡航制限も強化。家族訪問以外の目的での渡航を禁止したほか、送金額の上限規制を3カ月あたり1000ドル(約11万円)に設定した。米国からの訪問者数の減少による観光や外貨収入への影響に加え、送金の制限は一般市民の生活も直撃する。

生活環境が厳しさを増す中で、国民流出の動きは加速している。国交回復を受け、キューバ移民が米に上陸すれば滞在を認めてきた特別措置を米が2017年にやめると流出は大幅に減少したが、今年は急激な増加に転じている。

米税関・国境取締局(CBP)によると、18年10月~19年4月までの7カ月間で、米メキシコ国境を越えて不法に米入りしたキューバ人は1万910人と前年度(17年10月~18年9月)の通年実績をすでに5割上回る。地元メディアによると米テキサス州エルパソに接するシウダフアレスには現在も4千人以上のキューバ人が米入りを目指して滞在している。

「米の制裁で必要な物資の輸入が難しくなっている」。4月中旬に開かれた人民権力全国会議(国会)でディアスカネル国家評議会議長は演説で米を批判すると同時に、苦境を認めた。ヒル経済企画相は「ベルトを締めろ」と国民に厳しい生活にも耐えていくように求めたが、食料を求める長い列、そして次々と国を去る人を見る限り、国民の限界は徐々に近づいているようだ。

(ハバナで、丸山修一)

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