2019年6月16日(日)
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財政・金融の「ガラスの天井」破った先駆者
リブリン元FRB副議長が死去

経済
北米
2019/5/20 6:00
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米連邦準備理事会(FRB)副議長、米行政管理予算局(OMB)局長など米国の財政・金融政策の要職を歴任したアリス・リブリン氏が14日、死去した。

リブリン氏は男性優位の財政・金融政策の世界で「ガラスの天井」を破ってきた

リブリン氏は男性優位の財政・金融政策の世界で「ガラスの天井」を破ってきた

1931年生まれの88歳だった。女性の社会進出が進んだ米国でも経済、特に財政・金融政策の要職はなお男性が優位だ。リブリン氏はその「ガラスの天井」を破る先頭ランナーだった。

ブルッキングス研究所の研究員だったリブリン氏がワシントンで頭角をあらわしたのは1975年、議会に新設された議会予算局(CBO)の初代局長に抜てきされた時だ。

CBOは政府とは独立して客観的な経済・財政収支見通しを公表・分析する超党派の議会組織。ウォーターゲート事件で政府の信頼が失墜するなかで、議会による連邦予算の監視機能を強めることを狙っていた。

レーガン政権が81年に「減税すれば成長して税収は増え財政赤字は縮小する」と主張して実施した大型減税に、リブリン氏は「減税で財政赤字はむしろ急増する」との分析を公表。政権からは辞任圧力がかかったが、結果はCBOの見通し通りだった。リブリン氏は83年まで8年間にわたり局長を務め、CBOの地位を確立した。

94年にはクリントン政権で女性初の行政管理予算局(OMB)局長に就任した。大統領の予算教書をまとめるOMB局長は閣僚級ポストだ。

「私の政権に入った時、彼女はすでにワシントンのレジェンド(伝説)だった。彼女ほど連邦予算を理解している人はいなかった」。クリントン元大統領は14日、ツィッターでリブリン氏の業績をたたえた。

96年にはクリントン氏の指名で、FRB副議長に就任、99年までグリーンスパン議長を支えた。ナンバー2の副議長に女性が就いたのもこれが初めてだった。

副議長退任後はジョージタウン大学教授なども務めながら、共和、民主両党の対立が深まるワシントンで超党派による財政健全化策の重要性を訴え続けた。

三菱総合研究所政策・経済研究センター長兼チーフエコノミストの武田洋子さんはジョージタウン大大学院で指導を受けたリブリン氏を「人生の恩師」と慕う。3月末に米国出張した際に、がんと闘病中の同氏の自宅を見舞ったが、最後まで執筆活動を続け、二極化する米国の議会、社会、財政・社会保障の行く末を心配していたという。

「経済の視点を政策提言にいかし、正しいと思うことは言い続けること。そして日本のガラスの天井は米国以上に低く分厚いだろうがあきらめないでほしい」。武田さんがリブリン氏から受けた教えだ。

筆者もワシントン駐在中にリブリン氏に何度か取材したが、穏やかな口調ながら理路整然とした主張が印象的だった。昨年秋にブルッキングス研究所を訪れた際は、ロビーで2014年に女性初のFRB議長になった後輩のジャネット・イエレン氏と談笑しているのを目にした。

最高裁判事、国務長官、下院議長、FRB議長――。米国では相次いで女性がガラスの天井を打ち砕いてきた。残る要職は大統領、副大統領、財務長官、国防長官など。リブリン氏が切り開いてきた道がさらに延びるのもそう遠くはないだろう。

(編集委員 藤井彰夫)

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