2019年6月27日(木)

ふるさと納税大国の物語
(時流地流)

コラム(地域)
2019/5/20 12:07
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◆吉野ケ里遺跡が広がる佐賀県神埼市に国の名勝の九年庵がある。後に佐賀銀行西日本鉄道となる事業に携わった佐賀の実業家、伊丹弥太郎の別邸だ。サッカーのピッチに近い広さがある日本庭園は、コケのじゅうたんにモミジが映える紅葉の名所として知られ、春と秋に一般公開される。ふるさと納税の返礼品の起源を調べてみると、この九年庵に行き当たった。

紅葉の名所として知られる九年庵

◆2007年12月、税制改正でふるさと納税創設が決まった際、佐賀県の古川康知事が傷みの激しい九年庵の保全に寄付を使う計画を発表。お礼に九年庵の特別公開の招待券を贈るとしていた。これが最初の返礼品ではないだろうか。それから10年余り、佐賀牛などが人気の佐賀県は今や「ふるさと納税大国」である。

◆17年度は72億円を集めたみやき町など3市町がトップ10入りした。その中で九年庵のある神埼市は4712万円と最も少なく、松本茂幸市長はブログで「趣旨に基づく運用に努めてきた結果だ」と自負する。ただ議会から不満も出てきたため、隣町のみやき町に寄付の集め方を聞きに行った。

◆仲介サイトは10社超、事務も委託するといったアドバイスを参考にしつつも「ふるさとを思う人から寄付を」との方針は変えない。仲介サイトを増やし、返礼品に九年庵の特別招待券や墓の掃除代行、ヤクルトレディーによるお年寄りの見守りを加えると、寄付は2億5千万円近くに増えた。

◆今度は制度から外れるみやき町が神埼市の精神に学ぶ番だろう。6月からの新制度で、ふるさと納税は分散するとの見方が出ており、多くの市町村にとってはチャンスになる。自治体が地場産品の開発といった地道な創意工夫に知恵を絞り、よりよい競争になることを期待したい。(斉藤徹弥)

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