2019年6月17日(月)

食品ロス、誰のせい? 処理工場にパンや卵の山

ドキュメント日本
2019/5/19 16:37
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食品の大量廃棄問題への対応が急務となっている。食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」は年間643万トン。国会では「食品ロス削減推進法案」が審議中で、大手コンビニも売れ残り削減に向けて、食品の値引き容認にかじを切った。食べ物に対する考え方の見直しが迫られる中、毎日大量の廃棄食品が運び込まれるリサイクル工場を訪ねた。(中村信平)

運ばれてきた未開封のパンを選別し処理する(9日、相模原市の日本フードエコロジーセンター)

運ばれてきた未開封のパンを選別し処理する(9日、相模原市の日本フードエコロジーセンター)

相模原市にある「日本フードエコロジーセンター」。9日午前、トラックが絶え間なく訪れ、大型のコンテナが搬入された。コンテナの中は、原形をとどめたままの食パンやメロンパン、殻をむいたばかりのゆで卵、鮮やかなピンク色のハムなどでいっぱいだ。

「ここに来る廃棄物はほとんどが食べられるものです」と語るのは同センターの高橋巧一社長(52)。廃棄物にもかかわらず、腐敗臭はなく、カビの生えた食品も見当たらない。工場はスーパーや食品工場など約180の事業所と契約しており、毎日約35トンもの食品をリサイクルしているという。

食品はベルトコンベヤーに載せられ、手作業や磁石を使った機械で異物を取り除く。殺菌処理の後、乳酸発酵させて液状の豚の飼料に姿を変え、翌日には関東近郊の養豚場に送られる。高橋社長は「リサイクルされる食品はほんの一部。全国では大量の食品が焼却処分されている」と説明する。

日本フードエコロジーセンターで処理される食品廃棄物(9日、相模原市)

日本フードエコロジーセンターで処理される食品廃棄物(9日、相模原市)

環境省によると、食品ロスは2016年度に643万トン。統計を始めた12年度以降、高止まりの状態が続く。近年、問題となったのがスーパーやコンビニなどが期間限定で大量販売するおせちや恵方巻き、クリスマスケーキなどの売れ残りだ。高橋社長は「イベントの日付が近づくと大量の廃棄食品が運び込まれる」と語る。

廃棄処分には国民の税金も投入されている。食品を含む事業系一般廃棄物を焼却処分する場合、事業者に加え、自治体も一部の費用を負担するためだ。自治体によって異なるが廃棄物1トンを燃やすのに数万から十数万円の税金が使われている。

ジャーナリストの井出留美さんは食品ロスの現状について「小売業者は賞味期限ぎりぎりの商品を消費者が敬遠することを恐れて、メーカーに製造日から間もない商品の供給を求める。メーカーは圧倒的な購買力を持つ小売業者の要求に逆らえず、賞味期限まで余裕のある商品も廃棄に回す。悪循環が続いている」と指摘する。

変化の兆しはある。国会では16日、食品ロス削減推進法案が衆院を通過した。法案は、政府に食品ロスに関する施策を行う責務があると明記。内閣府に「食品ロス削減推進会議」を設け、廃棄される賞味期限内の食品を企業などから譲り受けて福祉施設などに届ける「フードバンク」活動への支援を義務付けた。

セブン―イレブン・ジャパンが今秋から販売期限の迫った弁当やおにぎりの実質的な値引きを始めるなど、廃棄削減に向けた小売業者の取り組みも目立ち始めた。

より新鮮で、注目される食べ物を求めてきた消費者にも意識改革が迫られている。

■消費期限間近、半数購入せず

環境省の推計では2016年度の食品廃棄物は2759万トン。このうち「食品ロス」は643万トンに上る。これは国連世界食糧計画(WFP)が1年間に途上国などに援助する食糧の約2倍にあたる量だ。

内訳は食品工場やスーパー、コンビニなどから排出される「事業系」が352万トン、家庭から出る「家庭系」が291万トン。一方で、世界では今も9人に1人(約8億人)が栄養不足とされる。

消費者の意識は高いとはいえないのが現状だ。消費者庁が1月、3千人の男女を対象に行った意識調査では、7割が食品ロス問題を「知っていて削減に取り組んでいる」と回答したが、賞味期限が近い商品を選んで購入したことが「ほとんどない」「まったくない」が半数を超えた。

神戸市が16~17年に行った調査では、食品ロスが「ほとんどない」「まったくない」とした家庭が、実際は月平均3~4回、手つかずの食品を廃棄していた。

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