2019年7月19日(金)

関電の中間貯蔵地選定「福井県外の約束」どこまで

環境エネ・素材
関西
北陸
2019/5/20 6:00
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関西電力の使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を原子力発電所がある福井県以外から選ぶ。4月の16年ぶりの知事交代で、関電と福井県のこの約束に変化が生じるかに注目が集まっている。杉本達治新知事は原発立地自治体から出ている一時的な保管容認論にも耳を傾ける姿勢だ。原発再稼働をリードしてきた関電の同問題は原発政策にも影響を及ぼしかねない。

杉本新知事の姿勢に注目が集まる(4月23日の就任会見、福井市)

杉本新知事の姿勢に注目が集まる(4月23日の就任会見、福井市)

「使用済み核燃料は(福井県の)外に出して処理、処分していただくことに変わりはない」。杉本知事は4月23日の就任会見でこう述べた。ただそのうえで原発の地元からの一時保管容認論について問われ「決して県だけでものを決めるのではなく、(地元などの)ご意見を伺っていく」と含みも持たせた。

福井県には関電の全原発がある。長期政権を打ち立てた西川一誠前知事は、原発による発電は担うが「核のゴミ」である使用済み核燃料は県外で処理してもらうとの立場を堅持してきた。関電は17年、大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の再稼働同意を県から取り付ける過程で中間貯蔵候補地の県外選定を約束せざるをえなかった。

杉本新知事は自治省(現総務省)OBで、西川知事時代に副知事として原子力分野を担当した。知事選では若返りを訴え当選。政策面では全般的に西川路線の継承をうたってきたが、中間貯蔵施設の候補地選定に関しては西川氏より柔軟な姿勢を示している。

国の政策のもと青森県で使用済み核燃料の再処理工場の建設が進められているものの、遅れている。関電の原発の貯蔵プールはあと6~9年程度でいっぱいになるため、中間貯蔵施設が必要だ。同施設を確保しなければ原発を動かせなくなる恐れがある。

しかし原発への厳しい世論もあり県外のハードルは高い。18年には「東京電力ホールディングスと日本原子力発電が青森県むつ市に建設する中間貯蔵施設に相乗り」との一部報道が出ると同市は猛反発。その後の選定作業も難航し、関電は福井県に約束した「18年中」を断念した。今は「20年を念頭にできるだけ早い時期」に後ずれしている。

この流れのなかで原発立地自治体から出てきたのが、中間貯蔵施設ができるまで、福井県内の原発の敷地で一時的な保管を容認する声だ。他電力も採用する「乾式貯蔵」という方法を想定している。地元としては使用済み核燃料の扱いが曖昧な状態は困るとの立場だ。原発が止まれば雇用などの面で地元経済への影響も大きい。

関電の岩根茂樹社長は4月25日の定例会見で、杉本新知事の就任が中間貯蔵施設の候補地選びに与える影響について問われ「これまでと変わらない。約束通り県外の候補地選定に全力を尽くす」と答えた。

しかし選定作業の厳しさは変わっていない。原発立地自治体の一時保管容認論は関電にとって助け舟となるため「杉本新知事のもとで存在感を増すことは十分にあり得る」(エネルギー業界関係者)。半面、県内の選択肢は一時的でなく「最終貯蔵」になってしまうのではとの不安もつきまとうため、そう簡単な議論でもない。

電力業界では「むつ説」も依然としてくすぶる。いずれにせよ関電の候補地選びは引き続き難路を行くことになる。原子力規制委員会は4月24日、原発に義務付けているテロ対策施設の完成期限が守れなければ原則として停止命令を出す方針を決めた。関電は期限より遅れる見通しを示しており、電力会社にとっては新たな難題だ。原発の先行きは混沌としている。

(中西誠)

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