2019年5月23日(木)

対中交渉に「切り札」 ファーウェイへの輸出禁止措置

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経済・政治
2019/5/17 1:00
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は15日、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発動した(「米、ファーウェイへの輸出を事実上禁止」参照)。中国による貿易交渉の先延ばしを警戒し、「切り札」を出した形だ。中国の産業育成策「中国製造2025」の最重要企業といえる同社への圧力強化は、6月の20カ国・地域(G20)首脳会議に向けて習近平(シー・ジンピン)国家主席に早期の譲歩を促す強烈なメッセージとなる。

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中国企業に対するハイテク部品の供給停止は「米国側の最強カードの一つだ」と米中交渉筋は打ち明ける。

トランプ政権は2018年4月にも中国国有通信機器大手、中興通訊(ZTE)に半導体などの輸出を禁止する制裁措置を発動した。携帯電話などの生産ができなくなったZTEは経営危機に陥り、「習氏がトランプ大統領に電話して、制裁解除を頼み込んだ」(米中交渉筋)。中国が液化天然ガス(LNG)や農産物の大量購入案を提示するなど、米国との貿易協議に真剣に取り組む姿勢を見せたのはその後だ。

ファーウェイへの禁輸措置の衝撃ははるかに大きい。18年12月期の売上高は7200億元(約12兆円)で、ZTEの約8倍。次世代通信規格「5G」で先行し、特許の国際出願件数は世界トップを占めるなど、中国のハイテク企業の代表といえる。

「トランプ政権はファーウェイにも禁輸措置を打つ機会を見計らっていた」とワシントンのロビイストは指摘する。米司法当局はZTEへの制裁と前後して、ファーウェイにもイランへの不正輸出疑惑で捜査を進めてきた。18年12月には米中首脳会談の当日に、カナダの司法当局が米国の要請を受けてファーウェイ創業者の娘で副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟氏を逮捕した。

米政府内には「ファーウェイへの輸出規制はグローバルな影響があまりにも大きすぎる」(商務省関係者)との慎重論もあった。それでもトランプ氏がこのタイミングで強硬策に踏み切った背景には、中国との貿易交渉が暗礁に乗り上げたことがある。

トランプ氏と習氏は18年12月の首脳会談で貿易戦争の打開策を探ると決め、協定案を詰めてきた。閣僚級協議で「合意文書の95%はできあがっていた」(米中交渉筋)が、中国は5月に入って見直しを求めるなど突然手のひらを返した。

交渉筋は「トランプ氏と習氏は昨年12月以降、秘密裏に3回も電話協議した」とも明かす。トランプ氏は習氏と水面下で直取引していただけに中国への不信感を強め、「おきまりの約束破りだ」と激怒しているという。

トランプ氏は「6月末の日本でのG20首脳会議に合わせて、習氏と会談することになるだろう」と繰り返し、早期の妥結を中国に呼び掛ける。しかし中国側は沈黙を保ったままで「トランプ氏の再選の可否がわかる20年の大統領選まで中国は動かないのではないか」との見方も浮上している。

ムニューシン米財務長官は米議会で「近い将来に北京に行くと見込んでいる」と閣僚級協議の再開に意欲を見せた。だが中国商務省の高峰報道官は16日の記者会見で「中国は米側が訪中する計画を把握していない。前回協議で米中双方は正直で建設的な交流をしたのに、米国は貿易摩擦を絶え間なく高め、交渉は挫折した」とあしらった。

トランプ氏はファーウェイへの禁輸というカードを切ることで、中国に「短期決戦」を改めて迫ったといえる。一方、市場には「中国は保有米国債の売却やアップルなど米製品への不買運動で対抗する可能性もある」との観測も流れ始めた。米中貿易戦争は制裁関税以外にも対抗手段を広げる「総力戦」の様相を呈している。

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