2019年5月23日(木)

米・イランの対立先鋭化 サウジ巻き込み緊迫

中東・アフリカ
北米
2019/5/16 22:20
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【アブダビ=岐部秀光】米国とイランの対立が先鋭化し、中東情勢が一段と緊迫してきた。トランプ米政権がイラン産原油の全面禁輸に乗り出し、イランは核兵器開発につながるウラン濃縮の拡大に踏み切る可能性を示唆した。ホルムズ海峡付近ではサウジアラビアなどの石油タンカーが攻撃され、米当局はイランの関与を疑う。米とイランはともに直接の武力行使を望まないが、偶発的な衝突のリスクが高まる。

対立を深める米国のトランプ大統領(左)とイランのロウハニ大統領=AP

対立を深める米国のトランプ大統領(左)とイランのロウハニ大統領=AP

サウジ主導の連合軍は16日、イエメンの首都サヌアにあるイスラム教シーア派武装組織「フーシ」の武器庫などを空爆した。14日にサウジで、送油管を無人機で攻撃したフーシへの報復だ。サウジのハリド国防副大臣は16日、ツイッターに「(送油管攻撃は)イランが命令した」と投稿した。

対立は米国の同盟国でイランと鋭く対峙するサウジを巻き込んだ。12日にはサウジなどのタンカーが攻撃を受けた。米当局はイランか同国の支持者の仕業だとにらむ。

きな臭さが強まったきっかけは、5月初めの米国による制裁強化だ。イラン産原油の禁輸で2018年11月から一定期間、日本など一部の国と地域に認めてきた適用除外を撤廃した。強硬派のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はペルシャ湾に空母や爆撃機を派遣すると表明した。

イラン国内の強硬派が反発した。筆頭は米国が「外国テロ組織」と指定したイラン革命防衛隊という軍隊だ。「国際協調は失敗だ」と突き上げられたロウハニ大統領は8日、これまで守ってきたイラン核合意の義務履行の一部停止を表明した。

これを受け、米政府はイランからの鉄鋼やアルミの輸出を封じる新たな制裁を発動し、同国の外貨獲得の道を狭めた。

米国が離脱したイラン核合意を守ろうとした英独仏の欧州勢には手詰まり感が漂う。イランは8日の発表で、60日以内に英独仏が原油取引や金融決済を正常化すれば合意を維持していくと説明したが、欧州企業の多くは米国の制裁を恐れてイラン市場を諦めている。

米英独仏ロ中の6カ国が15年にイランとまとめた核合意は、仮にイランが核武装の意思を固めた場合でも、核兵器の取得まで一定の時間がかかるように設計された。しかし、イランが合意を守らなくなれば、秘密裏の核開発は可能になる。

米国とイランは、1979年のイラン革命とその後の在テヘラン米大使館占拠事件を機に対立を続けてきた。揺さぶりや挑発は双方の駆け引きの常とう手段だった。しかし、オバマ前米大統領の時代まであった非公式の対話ルートはトランプ政権で機能していない。

だれも望まない軍事衝突が、ささいな情報伝達のミスや誤解で生じるリスクが高まっている。

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