2019年9月19日(木)

北白川派が映画「嵐電」 学生×プロ 学びと刺激
文化の風

関西タイムライン
2019/5/17 7:01
保存
共有
印刷
その他

京都市街を走る路面電車を舞台にした映画「嵐電」の公開が24日に始まる。京都造形芸術大学映画学科の学生とプロが一緒に映画を作るプロジェクト「北白川派」の第6弾作品だ。来年公開予定の映画も製作が進む。小規模でもとがった作品を生み出してきた活動は一時中断していたが、再び活発化している。

「嵐電」主演の大西礼芳は京都造形芸術大学の卒業生((C)Migrant Birds / Omuro / Kyoto University of Art and Design)

「嵐電」主演の大西礼芳は京都造形芸術大学の卒業生((C)Migrant Birds / Omuro / Kyoto University of Art and Design)

「嵐電」は高校生同士と20代、40代の男女3組のラブストーリーだ。行き交う電車のように、3つの恋路が虚実を越えて行き来する。主演の井浦新は「軸には各世代のラブストーリーがありつつ、シーンごとにものすごく多くのことが起きており、想像させられる映画だ」と見どころを語る。

もう一人の主演で、他人と交わるのが苦手な女性にふんしたのが同大学卒の大西礼芳。在学中に北白川派第2弾の「MADE IN JAPAN こらッ!」(2011年)の主演に抜てき。多くの映画やドラマに出演した。「人見知りだった昔の自分を思い出しながら演じた」と振り返る。

■黒木華ら輩出

映画を学ぶ大学や専門学校は多いが、実際に劇場公開される作品に学生が関わるのが北白川派の特徴だ。俳優では大西のほか、ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した黒木華や、NHK連続テレビ小説に出演した土村芳らの俳優を輩出。製作陣では「はらはらなのか。」(17年)監督の酒井麻衣らが北白川派を経験した。

今回は18年2月に撮影が始まる半年ほど前から学生を集め、ロケハン(舞台取材)からスタート。ポスター作りなども含めると50人以上の学生が参加した。ロケハンや資材集めなど裏方を担当した3回生の三井康大さん(21)は「撮影現場外の仕事の多さに驚いた」と振り返る。撮影終了後にはプロのスタッフとの人脈を生かし、憧れていた特撮ヒーロー作品の造形のアルバイトを経験した。

映画学科准教授で「嵐電」監督の鈴木卓爾は「参加学生が舞台や自主映画を作るなどの動きもある。将来に向けたきっかけをつかんでくれたようだ」と手応えを感じる。井浦が「北白川派に参加すると真っ白な学生が周りにたくさんいてくれ、芝居が洗濯される感覚がある」と話すように、第一線で活躍する俳優にも刺激を与えているようだ。

北白川派は09年公開の「黄金花 秘すれば花、死すれば蝶」(監督・木村威夫)以降、立て続けに5本を送り出した。製作委員会方式の大規模映画では難しい、"とがった"作品ばかりだ。だが15年の「正しく生きる」以降は方向性を模索し、一時中断していた。

構想から公開まで数年がかりの映画製作を、大学カリキュラムに位置づけるには難しさもつきまとう。「嵐電」ではカリキュラムとは別に有志で学生を募集。撮影後、編集や予告編製作の授業に素材を活用した。

「のさりの島」の撮影風景。左端が助監督を務めた学生=京都造形芸術大学提供

「のさりの島」の撮影風景。左端が助監督を務めた学生=京都造形芸術大学提供

■次回作も製作

試行錯誤しながらも製作ペースを速めている。熊本県天草市を舞台に、おれおれ詐欺犯と高齢者の交流を描く「のさりの島」は今年3月に撮影を終えた。参加学生はリポートを提出し、単位を認定する形にするという。海外の映画祭出品後、20年の公開を予定する。

「のさりの島」では学生がロケ地との信頼関係づくりから関与。予算書作りも担い資金の管理も任せた。映画学科長で同作監督の山本起也は「食事代一つとっても、最終的にお客さんを獲得しないと回収できない。学生でも自覚を持つことが大事」と、現場の厳しさを身を持って伝えている。

撮影期間中、スタッフらの食事作りや地元との窓口役を果たしながら、出演もした4回生の中田茉奈実さん(21)は「悔しい思いもして、プロとの差も感じ、将来俳優として生きる覚悟ができた」と先を見据える。厳しい環境の中で、作品も人材も磨かれている。

(西原幹喜)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。