2019年6月25日(火)

サンフランシスコ市、行政機関の「顔認証」利用を禁止

ネット・IT
北米
2019/5/16 17:06
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【シリコンバレー=中西豊紀】米サンフランシスコ市は14日、人工知能(AI)を使った顔認証技術を行政機関が利用することを禁じる条例案を可決した。顔認証には「行政による監視につながる」と市民団体などが反発している。米国の主要な自治体で同様の禁止令を出すのは同市が初となる見通し。一方、新技術の芽を摘みかねないとの懸念の声も出ている。

条例づくりを主導した民主党所属のアーロン・ペスキン市議=ロイター

条例案は委員会で8対1の賛成多数で可決された。カメラがとらえた人の顔の画像をAIで分析する顔認証ソフトウエアについて、警察など市の53の機関での利用を禁じる内容だ。連邦政府の管轄下にある空港や港湾での利用は認めるという。来週に予定する採決で正式に決め、1カ月以内に施行する。

同技術は犯罪者や不審者の特定などに役立つとして官民での活用が広がっているが、プライバシー保護の観点から採用への慎重論も出ている。サンフランシスコ市でも、人権団体の全米市民自由連合(ACLU)が「人々の日常監視につながり健全な民主主義にそぐわない」との意見を出すなど、禁止を求める意見が出ていた。

条例づくりを主導した民主党所属のアーロン・ペスキン市議は米紙ニューヨーク・タイムズに対し「IT(情報技術)大手によって変貌をとげた市での規制は米国へのメッセージになる」と述べた。米メディアによると、類似の禁止条例はサンフランシスコ市に近いオークランド市やボストン近郊のサマービル市などでも検討されているという。

一方で、多様な側面を持つ技術の一方的な禁止には疑問の声も出ている。ジョージ・ワシントン大学で憲法が専門のジョナサン・ターレイ教授は「公共の安全を守る技術を否定するのは困難だ」と日本経済新聞の質問に回答した。公共の利益を巡っての技術活用は解釈が分かれている。

顔認証技術が進化の途上にあるのも事実だ。画像認識の精度は「2011年には人間が上だったが、16年にはAIが人間を超えた」(グーグルの研究部門幹部)との分析もあるが、画像を分類する際の「偏向」の問題はまだ解決していない。

1月にはマサチューセッツ工科大学(MIT)が顔認証について「肌の色が薄い男性は精緻に認識するが、肌の色が濃い女性はそうではない」との研究報告を発表した。AIは学習データに偏りがあると、正確な認識結果を出すことが難しい。

中国では顔認証を治安維持のために当局がフル活用している。日本でも税関などで顔認証技術が使われている。サンフランシスコ市での動きがどこまで広がるのか、今後注目を集めそうだ。

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