妊娠中絶禁止法、アラバマ州で成立 禁錮最大99年
米南部アラバマ州で15日、人工妊娠中絶を禁止する州法が成立した。性犯罪被害者の女性も対象で、合法的に中絶が可能なのは女性に生命の危険がある場合などに限られる。事実上、中絶を全面禁止する「全米で最も厳しい法律」(米紙ワシントン・ポスト)だ。中絶した女性は罪に問わないが、手術をした医師らに10年から最大で99年の禁錮刑を科す。

州上下両院で可決され、アイビー知事(共和党)が署名した。女性が人工妊娠中絶を選ぶ権利は、1973年のロー対ウェイド事件で連邦最高裁が認めている。賛成票を投じた州上院のコリンズ議員(共和党)は「この法案は(最高裁)判決への挑戦と、まだ生まれていない赤ちゃんの命を守るためのものだ」と強調した。
州法は6カ月後に施行される。性的暴行などによる望まない妊娠も対象に含まれているため、民主党や人権団体などは阻止に向けて提訴する構えだ。歌手のレディー・ガガさんは15日、ツイッターで「性犯罪者より医師に厳罰が下される。茶番だ」と批判した。
米国では南部のミシシッピ、ケンタッキー、ジョージア、中西部オハイオなど、共和党の影響力が強い複数の州で中絶を規制する法律の成立が相次いでいる。いずれも胎児の心音を聞き取れるようになって以降の中絶を禁じており「ハートビート(心拍)法」と呼ばれる。
ロイター通信によると、今年に入って16州で規制法案が提案された。保守派による各州の動きは連邦最高裁の判断を覆す機運づくりを狙う。中絶に反対するキリスト教右派や保守派へのアピールを狙うトランプ大統領も規制強化の姿勢を示している。
一方、2020年大統領選の民主党指名を争う候補者からは、法案を推進した保守派を「偽善者」(サンダース上院議員)と非難する声も上がる。